本当にこわい「富士山噴火」 〜いずれ “必ず“ 起こる、首都機能を麻痺させる大災害〜

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《富士山は活火山である》

美しく、雄壮な富士山は、霊峰富士とも呼ばれ、常に人々を魅了する存在です。特に日本人にとっては唯一無二の存在でもあります。ですが、富士山は活火山です。今から300年以上前の1707年12月16日は、前回の富士山噴火である「宝永大噴火」が発生した日です。現在でも富士山の南東斜面には、山頂火口よりも大きな、宝永噴火でできた宝永火口が残っています。

実際古記録によれば、現在の富士山の噴火は781年以後で確実なもので10回記録されています。過去の大規模噴火では人々に大きな災いをもたらしています。例えば864年の貞観噴火では、大量の溶岩を噴出し、現在の原生林で覆われる青木ヶ原樹海(青木ヶ原溶岩)を作り出しました。

先にも述べましたが、前回の噴火は1707年12月16日、時は江戸時代の「宝永大噴火」であり、以降300年以上噴火していないことになります。現在の富士山は火山学者の見解でも、いつ噴火してもおかしくない「噴火スタンバイ状態」と言われています。


https://www.youtube.com/watch?v=ipULyDw9WoE

宝永大噴火について 富士山資料館より引用

《富士山噴火で発生する可能性があるもの》

・溶岩流、噴石、火砕流

・冬季であれば融雪型火山泥流

・山体崩壊

・噴火による空振(衝撃波)

・火山灰

富士山ハザード統合マップ 富士山火山防災対策協議会より引用

新しい科学的知見に基づき、2021年3月に富士山噴火ハザードマップが富士山火山防災対策協議により17年ぶりに改定されました。この改定で、より広範囲に溶岩流や火砕流などの影響が出る可能性が示されました。(ただし、ハザードマップはあらゆる火口からの噴火を想定したものであるため、1度の噴火で全ての想定範囲に溶岩流の危険が生じるわけではありません。)

参考:山梨県 富士山ハザードマップ(令和3年3月改定)のページ

溶岩流や火砕流のリスクがある地域は、もちろん直接的な命の危険があり避難が必要となり、家屋を失う可能性があったり、被害の大きい災害となります。

山体崩壊とは大規模の山崩れのことであり、実際に富士山は過去に複数回の山体崩壊を起こしています。山体崩壊については、1980年にアメリカ合衆国ワシントン州の「セントヘレンズ山」で発生した様子が動画で記録されており(下記の動画)、参考になります。これだけの崩壊が富士山で発生した場合の被害は計り知れません。


https://www.youtube.com/watch?v=bgRnVhbfIKQ

富士山からやや離れた場所(西側の関東圏の大部分)では、溶岩や火砕流などの直接的な被害はないものの、偏西風に乗った火山灰が、関東の広域において数cm〜数十cm積もると予測されています。

降灰の可能性マップ 富士山火山防災対策協議会より引用

《火山灰とは? 鹿児島県 桜島との比較も含めて》

火山灰は木や炭を燃やした後に出る「灰」とは全く異なり、その正体は軽石や岩石が細かく砕かれたもので、火山ガラスといわれる極めて細かく鋭い破片です。水には溶けず、乾燥すれば舞い、雨が降ればセメントのように泥状となり、固まります。

富士山噴火の火山灰について、今も噴煙を度々上げている鹿児島県の桜島が参考にされる場合がありますが、規模の面で大きく異なります。前回の富士山噴火である宝永噴火では、桜島が放出する火山灰の約200年分が、わずか2週間で放出されています。

噴煙を上げる鹿児島県 桜島

実はこの大量の火山灰により、首都圏は想像もつかないような壊滅的なダメージを受ける可能性があり、富士山噴火が甚大な大災害となる最も大きな理由です。

《火山灰により予想される被害》

《太陽光を遮断し、昼でも暗くなる》

上空を浮遊する火山灰により太陽光が遮断され、昼でも夜のように暗くなります。

《健康被害》

細かく鋭利である火山灰は、目の角膜や鼻、のど、気管支を痛めます。喘息など基礎疾患がある場合、悪化する可能性もあります。長期に吸入すると塵肺(じん肺)という不可逆的な肺機能低下を引き起こします。実際、江戸時代の宝永噴火では「咳になやまされない人はなかった」と記録があります。停電や精密機器の故障により、医療機関の機能が麻痺し、適切な医療が受けられない可能性があります。

《家屋の倒壊》

家屋に火山灰が積もると、屋根や家屋自体の倒壊の可能性があります。10cmの火山灰が積もると、1平方メートルあたり100kgの重さとなります。雨が降るとさらに重さを増します。

《PC、スマホなど精密機器が故障する》

電子機器やパソコンなどの隙間から細かい火山灰が侵入すると、静電気により内部に付着して誤作動や故障の原因となります。首都圏のコンピューターが機能不全に陥ると、金融・通信・流通など全てに甚大な影響が出るため、江戸時代の宝永噴火よりさらに高度の被害が出ると推測されています。

《停電》

雨で濡れた火山灰は電気を通す性質があり、送電線の碍子(がいし)から漏電し、ショートして停電が発生。また、発電所の精密機器やタービンに入り込むと発電所が稼働不能となり、大規模な停電が発生します。東京湾周囲には多くの火力発電所があり、停止すれば首都機能は停止します。

《鉄道が止まる》

停電だけでなく、レールに0.5cmの火山灰が積もっただけで、電車は運行できなくなります。

《飛行機やヘリコプターが飛ばなくなる》

エンジンが火山灰を吸い込むとエンジンが停止する可能性があり、視界不良も影響し、飛行できなくなります。羽田空港、成田空港は使用不能となり、降灰範囲の自衛隊基地や米軍基地も使用できなくなる恐れもあります。飛行機が欠航すれば物流が停止し、ヘリコプターが飛べないと救助活動にも支障をきたし、国防にすら悪影響が出ます。

《車》

火山灰が道路に1cm積もっただけで車は走行不能になります。火山灰によりスリップや動けない車が多発し、さらにエアフィルターに火山灰が詰まりエンジンが停止します。

《水道が止まる》

水道水が火山灰で汚染され、浄水場の濾過装置が目詰まりし、水道が停止します。車は走行できないため、給水車も出動できません。

《下水が詰まる》

火山灰は濡れると泥状になり、下水管を詰まらせ下水処理が困難になる可能性があります。

《東西の物流が停止する》

噴火口の場所によりますが、富士山の南側で噴火し、大規模な溶岩流が発生した場合、富士山南側にある東名高速道路、新東名高速道路、東海道新幹線が寸断されます。つまり東西の物流が停止し、災害からの回復がますます遅れます。

《農作物も育たなくなる》

農作物に火山灰が付着すると光合成が妨げられ、2cm積もるとほぼ全て枯れてしまいます。その後も長期にわたり不作の状態となり食糧不足が懸念されます。

《火山灰の処理は非常に手間がかかる》

火山灰は濡れるとセメントのように互いにくっ付き、排水溝に流すと詰まってしまうため、専用の袋に入れて処分場所へ運ぶ必要があります。始末が非常に悪く、先の理由でトラックやショベルカーなどが稼働できない可能性もあり、除去に時間がかかります。

《富士山噴火は極めて甚大な災害となる》

江戸時代の宝永噴火では、火山灰は2週間以上も降り続き、横浜で10cm、江戸で5cmも積もりました。同条件の噴火が現代で起こった場合、火山灰は2時間で東京へ到達し、後処理のことも考えるとライフライン停止、物流停止はそれ以上の期間となります。その上、ハイテク化された現代においては不確定要素が多く、被害は想像を超える可能性があります。

長期にライフラインは停止し、食料などの物流も停止し、医療も麻痺し、交通機関・車も麻痺するため遠方への避難もままならないと、八方塞がりの災害となる可能性があるのが富士山噴火です。政府が試算した経済損失は2.5兆円とされていますが、不確定要素が多く、実際の経済損失はこれ以上になるともいわれます。

※写真はイメージです

富士山が次にいつ噴火するか予測は困難です。噴火活動の前兆現象を捉えられる可能性はありますが、2014年に死者行方不明者63人の犠牲を出した御嶽山噴火のように、前兆を捉えても噴火の予測が難しい場合も十分にあり得ます。分かっているのはいつか「必ず」噴火するということ。リスクを知り、来るべき「Xデー」に向けて、日々備えておくことは非常に重要です。

火山灰対策についてはこちら
「ゴーグル」と「防塵マスク」と「レインコート」と「手袋」 〜粉塵・火山灰・エアロゾル・放射性物質などから身を守りましょう〜


https://www.youtube.com/watch?v=xuy2A1503Lw&t=189s

富士山噴火で生じうる影響について 山梨チャンネルより引用

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