夏の停電対策 〜電気を「使わない」対策と「使う」対策で、熱中症を予防する〜

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自然災害や電力ひっ迫など、停電はいつ発生してもおかしくありません。しかし、停電が発生する季節によって備え方も変わってきます。今回は、夏場の停電対策についてまとめました。

停電についてはこちら 

停電に備える 〜なぜ発生し、なにが起こり、どう備えるか〜

【夏場の停電は熱中症リスクが上がる】

災害は季節を問わず発生する可能性がありますが、特に夏は落雷や台風など、停電の原因となりやすい自然災害が多発しやすい季節です。

夏場の停電した室内は、エアコンや扇風機が止まるため温度・湿度が高く、風の流れも少ないため熱中症のリスクが高くなります。断水が重なれば水分補給もおろそかになり、なるべくトイレに行かないように水分摂取を控えがちになり、さらに熱中症のリスクが上がります。

熱中症とは、体内の熱を放出できずに熱がこもってしまったり、大量の汗をかくことで、水分不足による脱水や、塩分(ナトリウム)不足による電解質異常が起こることで、最悪死に至る病態です。軽症から重症まで、様々な症状があります。

熱中症の症状
  • 手足のしびれ、こむら返り
  • めまい、立ちくらみ
  • 頭痛、吐き気、嘔吐
  • 倦怠感(だるさ)、虚脱感
  • 普段と様子が違う、意識障害
  • けいれん  など

※意識がおかしいとき、自力で水分摂取できないとき、涼しい場所で体を冷やしても症状が改善しないときなどは、速やかに医療機関を受診しましょう。

熱中症についてや熱中症対策として塩分摂取の重要性はこちら ↓

塩タブレット・塩飴で熱中症を予防する 〜熱中症とは?|塩分補給の重要性|摂取量の目安|防災向け塩タブレット〜

【暑さ対策の基本は、電気を使わない対策】

夏場の停電時の暑さ対策の基本は、電気を使わずにできることが第一です。その上で、電気を使った暑さ対策を考える必要があります。

暑さ対策の基本
  • 直射日光を遮る(カーテン、レース、すだれなど)
  • 涼しい服装にする
  • 風通しを良くする
  • うちわや扇子を使う
  • こまめな水分補給・塩分補給(水や塩飴・塩タブレットなどの備蓄をしておく)
  • 濡れタオルや水風呂で体を冷やす
  • 普段から冷凍庫に保冷剤や凍らせた水やお茶のペットボトルを入れておく

保冷剤や濡れタオルなどで体を冷やす場合、首まわりわきの下足の付け根(鼠けい部)手首の内側といった太い血管が通っている箇所を冷やすと効率的です。保冷剤は肌に直接あてず、タオルなどで包んで使用するようにします。

停電したらクーラーボックスを用意し、保冷剤や氷を入れて保管しておくことにより、暑さ対策に役立てることもできます。

引用:日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト

【電気を使った暑さ対策】

部屋をしっかりと冷やすのであればエアコンが1番ですが、消費電力が大きく、ポータブル電源を使用したとしても、稼働できる時間が限られます。また、エアコンの機種によって100V電源で稼働するものと200V電源で稼働するものがあり、200V電源のエアコンを一般的なポータブル電源で稼働させることは基本的にできません(対応しているポータブル電源もあります)。

工事不要・室外機不要で簡単に設置できる小型のエアコンである、ポータブルクーラーを利用する方法もあります。ポータブル電源に接続して給電することにより、停電時でも冷風を得ることができます。ただし出力によって冷却能力が異なり、消費電力がやはり大きいため長時間の稼働はできないこと、部屋全体を冷やすというよりはあくまで一部をスポット的に冷やす機能に限られることには注意が必要です。

住宅用の太陽光発電と蓄電池システムが備わっている家であれば、エアコンを長時間稼働することもでき、最も有効な停電対策と言えますが、新たに設置するには工事や費用のハードルがあります。蓄電池システムが200Vのエアコンに対応しているかは確認が必要です。

停電時の電源確保の方法などについてはこちら ↓

停電に備える 〜なぜ発生し、なにが起こり、どう備えるか〜

こういった設備や機器を持っている家庭は限られるため、その他の電気を使った暑さ対策を準備しておくことが重要です。

電気を使った暑さ対策の種類
  1. 車のエアコンを利用する
  2. 電池・充電池式の冷房アイテムを使う
  3. 電源を必要とする冷房アイテムを使う

①暑い日中は車のエアコンを利用する方法もある

暑い日中はエアコンが稼働する車内へ避難したり、車で出かけたりするなど、車のエアコンを利用して涼を得る方法もあります。

エアコンは消費電力が大きく、バッテリーに負荷がかかるため、エンジンをかけて使用するようにしましょう。

当然、ガソリンが残っていなければ車のエアコンを動かすことはできないため、停電対策に限らず、普段から車のガソリンは半分減ったら給油して満タンにしておくのがおすすめです。

②充電式・乾電池式の扇風機(ハンディファン含む)を使う

最近では、コンセントやUSBからの充電式、または乾電池式の扇風機やハンディファンが増えてきており、風量も強く、バッテリーの持ちがよくなっていたりと性能がアップしています。ハンディファンは、停電時の熱中症対策にも役立ちます。

モバイルバッテリーがあればハンディファンを充電することもでき、折りたたみ式のソーラーパネルなどと組み合わせれば、長期の停電に対しても安心です。

ただし、あまりに小さいものは風量が不十分な場合があったり、稼働する時間が短いこともあります。また全般的に、ハンディファンは部屋全体に風を送る程の風量はなく、あくまで1人1個が目安である点に注意が必要です。

③夏場の長期の停電には、「ポータブル電源」と「ソーラーパネル」と「DCモーター扇風機(またはサーキュレーター)」が最も現実的

筆者宅のポータブル電源とDCモーター扇風機。
エアコンと併用して節電になるため、普段使いもしている。

扇風機は、空気自体を冷却する能力はないものの、風を循環させ、体に風を当てることで体温を下げてくれます

サーキュレーターは、直線的に風を送ることで室内の空気を循環させ、温度のムラをなくしてくれます

扇風機にはAC(交流)モーターDC(直流)モーターのモデルがあります。防災的におすすめなのはDC(直流)モーターのモデルです。ACモーターと比較しDCモーターのメリットは、消費電力が少なく、細かな風量調節が可能で、運転音が静かであることです。DCモーター唯一のデメリットは、ACモーターよりやや高額なことです。

消費電力はDCモーター約1.5〜20WACモーター約10〜40Wくらいです。500Whのポータブル電源なら、強運転でもDCモーターで25時間、ACモーターでも10時間以上の稼働が可能であり、長時間の運転が可能です。

風量最大で首振りオンにしても22Wの消費電力。
700Whのポータブル電源なら満充電で30時間以上の稼働が可能。

停電に備えるのであれば、冷却能力と稼働時間のバランスから、ポータブル電源+ソーラーパネル+DCモーター扇風機の組み合わせが最も現実的と言えます。これから扇風機を購入する方は、DCモデルの扇風機がおすすめです。

サーキュレーターの消費電力は20〜30Wくらい(DCモーターモデル)であり、ACモーターの扇風機と同じくらいの消費電力です。風力が強いため、災害時には扇風機の代わりとして使うことができます

【停電は起きる前提で備える】

夏の停電は命にかかわるリスクがあります。近年は、地球温暖化による異常気象や酷暑が頻発し、電力不足も深刻化しています。また、首都直下地震や南海トラフ巨大地震といった大規模な地震も危惧されています。

これからの時代、バッテリーを備えたグッズや、十分量の電気を溜めておくことができるポータブル電源は、防災的に必須となってくるのではないかと思います。

停電は必ず起こるものという心構えを持ち、具体的な備えをしておきましょう。

の停電対策についてはこちら ↓

冬の停電対策 〜停電時の寒さ対策|燃料・電気を「使わない」対策と「使う」対策〜