地震とは 〜地震大国日本に生きる私達が知っておきたい基本知識〜

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《地震とは》

地震とは、地球の地下に存在する「プレート」と呼ばれる岩盤のずれによって発生する現象です。地下の岩盤が周囲から押されたり引っ張られたりすることで、ある面を境として岩盤が急激にずれると揺れ(地震波)が伝わり、地表に達すると「揺れ」として体感します。

海のプレートに引きずり込まれた陸のプレートの先端が跳ね返って起きる地震を「海溝型地震」、プレートに力がかかりプレート内の岩の層(活断層)が崩れたりズレて起きる地震を「内陸型地震」といいます。

出典:「日本列島周辺で発生する地震のタイプ」(地震調査研究推進本部) 

地震は繰り返し起こります。ある領域を震源域として地震が発生し、余震を含めてエネルギーの放出が終わっても、プレートは常に動いているため岩盤にひずみとしてエネルギーが徐々にたまっていきます。そのエネルギーが限界に達すると次の地震が発生します。

海溝付近のプレート境界では数十年〜数百年で歪みが限界となり、これを解消するため海溝型地震が発生し、その規模はマグニチュード8クラスの大きな地震となります。一方、プレート運動に伴う歪みの一部は内陸へ伝わり、地殻の弱い場所である活断層が動くことにより歪みが解消されます。海溝型地震に比べて歪みが蓄積するのがゆっくりであるため、発生間隔が長く、規模はマグニチュード7程度と海溝型地震よりも小さくなります。

海溝型地震は発生間隔が比較的短く、100〜200年間隔で繰り返し発生しています。これに対し、内陸型地震1000年〜1万年前後です。またプレート運動の速度は年間数cmで一定であるため、地震の発生する場所や規模、発生間隔にはある程度の規則性があります。

《日本は地震大国》

日本周辺では、世界でも珍しく4つのプレートが複雑に接しています。海のプレートである「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」が、陸のプレートである「北アメリカプレート」「ユーラシアプレート」の方へ、1年あたり数cm(太平洋プレート年間8cmフィリピン海プレート年間3〜5cmずつ)の速度で陸のプレー トの下に沈み込んでいます

このため日本は、複数のプレートにより複雑に力がかかっているため、世界有数の地震大国となっています。

出典:「日本列島とその周辺のプレート」(地震調査研究推進本部) 

日本周辺では、震度1以上の有感地震は1年間に1,000〜2,000回発生しており、単純に平均すると1日3〜6回は発生していることになります。

全世界の0.25%の国土面積しかない日本において、全世界で発生したマグニチュード5の地震のうちの約1割マグニチュード6以上の地震のうちの約2割が日本で起きています。また日本及びその周辺では、世界で起こっている地震のほぼ1/10にあたる数の地震が発生しています。日本がどれだけ地震大国であるかが分かると思います。

出典:「世界の地震分布」(地震調査研究推進本部) 

《マグニチュードと震度について》

 マグニチュードと震度はよく混同されますが、「マグニチュード」は発生した地震自体の大きさ(規模)を表す値です。一方、「震度」はある地震が起きた場合にそれぞれの観測地点で観測された揺れの強さを表します。そのため、1つの地震にマグニチュードは1つしか与えられませんが、震度は揺れた地域ごとに発表される値となります。

マグニチュードについて

地震の大きさ(規模)を表す値で、「Magnitude」の頭文字をとって「M」で表します。気象庁が定める「気象庁マグニチュード」が一般的に使われます。地震学会などの標準は「モーメントマグニチュード」が使われます。マグニチュードが1大きくなると地震の規模は約32倍になり、マグニチュードが2大きくなると約1000倍の規模になります。

例えば1995年の「阪神・淡路大震災」をもたらした「兵庫県南部地震」はM7.3、2011年の「東日本大震災」を引き起こした「東北地方太平洋沖地震」は日本国内における観測史上最大のM9.0の地震でした。

震度は10段階で表示されますが(後述)、マグニチュードは段階に分かれているわけではなく、上限がありません。これまでに観測された最大のマグニチュードは、1960年のチリ地震で観測されたM9.5となっています。

ちなみに、M10は地球上で起こりえる最大の地震の規模とされ、M11は恐竜絶滅の最も有力な一因とされている「チクシュルーブ隕石」の衝突エネルギーであり、M12は理論上地球が真っ二つに割れて起こる地震の規模とされています。

マグニチュードと地震エネルギーの関係(面積ではなく、体積が地震のエネルギーを表している) 出典:気象庁

震度について

震度はそれぞれの観測地点での揺れの強さを表し、0〜7までの数字で決められています。そのうち震度5と6はそれぞれ「弱」と「強」の2つに分かれており、全10段階となっています。

震度7以上の階級はないため、どれだけ激しい揺れでも最大震度は7となります。

出典:「震度と揺れの状況」(地震調査研究推進本部 提供元:気象庁) 

《大きな地震発生後の「余震」という表現から「同程度の地震」に変わった》

2016年に発生した熊本地震(内陸型地震)では、4月14日 21時26分にM6.5の地震(前震)が発生し、益城町で震度7を観測しました。しかしその28時間後の4月16日 1時25分にM7.3の地震(本震)が続けて発生し、西原村と益城町で震度7を観測ました。

内陸型地震で、マグニチュード6.5以上の地震が発生した後にさらに大きな地震が発生するのは、地震観測が日本において開始された1885年以降初めての事例であり、また同じ地点で震度7が2回観測されたことも初めてのことでした。

この熊本地震を受け気象庁では、これまでの経験則があてはめれらないとして、「余震」という表現を使わないことになりました。「余震」と聞くと「本震より規模の小さな地震」という印象を与えがちであり、地区の住民や関係者達の油断をもたらしやすくなります。そのため代わりに「地震発生から1週間程度は、最初の大地震と同程度の地震に注意してください」と呼びかけるようになりました。

《近年の日本で発生した主な地震》

大規模な地震が発生した場合、その地震によってもたらされた災害を「震災」と呼びます。例えば2011年3月11日に発生し未曾有の大災害となった「東日本大震災」は、「東北地方太平洋沖地震」という地震によってもたらされた震災です。

1995年(平成7年)1月17日 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)

1995年1月17日 5時46分に淡路島北部・明石海峡付近を震源とする、マグニチュード7.3の「兵庫県南部地震」によりもたらされた災害です。最大震度7を記録し、兵庫県南部を中心に大きな被害を出しました。災害関連死を含めた死者は6,434人となり、戦後最多となる死者を出す日本で初めての大都市直下の地震でした。

冬季の早朝に発生し、自宅で就寝中の人が多く、死因の多くは建物の倒壊や家具の転倒による「窒息死」や「圧死」で、次いで「焼死」でした。犠牲者のほとんどが地震発生直後に家が倒壊し、倒壊後間もなく死亡しています。この地震では建物自体の耐震性の確保や、家具の固定など地震対策の重要性が改めて認識されました。

2004年(平成16年)10月23日 新潟県中越地震(新潟県中越大震災)

2004年10月23日 17時56分に新潟県中越地方を震源としたM6.8の地震が発生しました。この地震では、阪神・淡路大震災以来、当時観測史上2回目の最大震度7を記録しました。この地震による死者は68名で、建物の倒壊などによる直接的な死者は16人、他の52人は災害関連死でした。ライフラインへの被害や、新幹線の脱線、道路の崩壊など交通機関の大きな被害も生じました。

2011年(平成23年)3月11日 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)

2011年3月11日14時46分に東北の三陸沖で発生し、マグニチュード9.0を観測した「東北地方太平洋沖地震」による災害と、これに伴う東京電力 福島第一原子力発電所事故による災害を合わせて「東日本大震災」と呼ばれます。最大震度は宮城県栗原市で震度7を観測し、震源域は岩手県沖から茨城県沖にまで南北約500km、東西約200kmと非常に広範囲にわたる、日本海溝付近の海溝型地震でした。

東北の太平洋沿岸各地が10メートルを超える巨大津波に襲われ多くの人が犠牲となり、死者 15,900人、行方不明者 2,523人(2022年2月末時点)、災害関連死 3,784人(2021年9月30日時点)、避難者数は2022年2月時点でも38,139人に及び、多くの日本人にとって忘れることのできない大災害となりました。

東日本大震災の写真集 |写真で知る未曾有の大災害3.11

2018年(平成30年)9月6日 北海道胆振東部地震

2018年9月6日 3時7分に発生した北海道胆振東部中東部を震源とする地震です。マグニチュード6.7で、北海道で初めて最大震度7を観測しました。

死者44名で、震源に近い勇払郡厚真町では震度7を観測し、地震前日の台風21号による大量の降雨で地盤が緩んでいたところに地震が発生したため、広い範囲で土砂崩れが発生し、巻き込まれた36人が死亡しました。

地震により離島を除く、北海道内のほぼ全域で大規模停電(ブラックアウト)が発生しています。

《今後発生が切迫している、大規模な被害をもたらす主な地震》

首都直下地震(関東)

30年以内に70%の確率で発生すると想定されている、首都圏(南関東地域)のいずれかを震源として起こる、マグニチュード7クラスの大規模な内陸型地震を通称「首都直下地震」と呼びます。

想定される死者数は最大約23,000人とされており、このうち約7割「大規模火災」によると想定されています。これは老朽化した木造住宅が密集している「木密地域」において、同時多発的に火災が発生し、炎や煙が渦を巻く「火災旋風」により被害が拡大するためです。

人口が集中する首都近辺においては、首都機能麻痺や多くの「帰宅困難者」の発生が問題視されています。

首都直下地震〜いつ起きてもおかしくない、首都を揺るがす大地震〜

南海トラフ巨大地震

出典:気象庁ホームページ

「トラフ」とは、海溝よりは浅くて幅が広く、比較的緩やかな斜面をもつ海底の凹地を意味します。「南海トラフ」とは、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する海底の溝状の地形を形成する区域で、駿河湾〜遠州灘〜熊野灘〜紀伊半島の南側の海域〜土佐湾〜日向灘沖までの広大な区域です。

南海トラフ巨大地震はマグニチュード8クラスの海溝型地震で、30年以内の発生確率は70〜80%と想定されています。

南海トラフ巨大地震では、静岡県から宮崎県にかけての広い範囲で震度6〜7の強い揺れになると想定されています。また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波が発生し、高いところでは30mを超えると予想されています。最悪の想定では、早いところでは地震発生から3分で津波が押し寄せ死者・行方不明者数は2011年の東日本大震災を遥かに超える、23.1万人にも上ると想定されています。

日本海東縁部で起こる大規模地震

出典:国土交通省 日本海における大規模地震に関する調査検討会 最終報告資料

日本海側は明確なプレートの境界部ではないため、内陸型地震の性格を持っており、発生間隔が長いとされています。想定される地震の規模はマグニチュード7クラスで、太平洋側の海溝型地震と比べると一回り小さい設定となっていますが、日本海側は太平洋側よりも断層が浅く、動く角度が急なため、地震規模に比べて津波が高くなるとされています。また断層が陸地に近く、津波到達までの時間が短いのが特徴です。想定される津波の高さは数m〜20m以上です。

30年以内の発生確率は3%~6%と想定されています。太平洋側の地震に比べて低いと感じるかもしれませんが、活断層で発生する地震の確率としては最も高いSランクに相当し、いつ発生してもおかしくない状態です。

日本海溝・千島海溝で想定される巨大地震

出典:内閣府 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ資料

2021年12月21日に内閣府より、「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」が発生した場合の被害想定が発表されました。これまでの津波堆積物の調査から、この海域において17世紀には巨大地震と大規模の津波が発生しており、約300年〜約400年の間隔で繰り返し発生していると考えられています。

この海域での地震により発生する津波は、北海道沿岸や東北地方沿岸で10mを超え、高いところでは30m弱の津波が想定されています。想定死者数は発生する季節や時間帯によって変動があり、日本海溝モデルで約6000人〜約19万9000人、千島海溝モデルで約2万2000人〜約10万人の死者数が想定されています。

前回発生した地震からすでに400年程度経過していることから、この海域での巨大地震の発生が切迫している可能性が高いとされています。

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震 〜発生が切迫している、最大推計死者数19万9000人の巨大地震〜

《地震予知は可能か?》

地震の前兆・法則・予言

昔から言われていることに、地震の前兆・法則・予言があります。

前兆としては、ナマズが騒ぐと地震が起きる、地震の直前にクジラやイルカが海岸に打ち上げられた、鳥が一晩中鳴いていた、ネズミがいなくなったなど動物の異常行動や、地震雲などが有名です。

地震の前兆といえばナマズが有名

法則としては、スーパームーンと巨大地震、バヌアツで大地震が起きると日本でも地震が起きる「バヌアツの法則」、ニュージーランドで地震が起きると日本でも地震が起きる「ニュージーランド地震の法則」などがあります。

予言に至っては、古代文書、宇宙からの予言、神のお告げ…など無数にあるようです。

どれも一見は地震の予知を匂わせる内容に聞こえますが、結論を言えば、これらはどれも意味のある地震予知にはならないと言えます。

地震予知に求められる要素

地震を予知するということは、「地震が発生する時」「場所」「規模(大きさ)」3要素を精度高く予測しなくては予知として実用性がありません。1つでも欠けたり、「近いうちに(時)、日本のどこかで(場所)、大きな地震(規模)が起こる」という曖昧な予知・予測や、マグニチュード4程度の毎日発生しているような地震を予知・予測することは情報としての価値はほぼありません。

少なくとも「時」は1週間以内程度の範囲で、「場所」は東京直下などある程度限定された場所を指摘し、「規模」はマグニチュード7程度など、ある程度限定された精度が求められますが、現在の科学技術では難しいとされています。そのため、インターネット上などで出回っている日時と場所を特定した地震予知はデマと考えられます。

日本地震学会は「現時点で地震予知を行うのは非常に困難」という見解を出しています。

南海トラフ地震の前兆をつかむ研究

地震の前兆を捉えようとする研究は進んでおり、例えば近い将来に発生すると言われている「南海トラフ地震」では、想定震源域付近の「スロースリップ」という海と陸のプレート境界がゆっくりと静かにずれ動く現象を観測し、地震発生の可能性が平常時に比べて相対的に高まったかどうかを評価し、気象庁が「南海トラフ地震臨時情報」を発表します。しかし、時間と場所を特定した「予知」までは到達できていないのが現状です。

《大地震はいつ、どこで発生してもおかしくない》

地震の発生確率はあくまでその周期性から統計的に導き出された値です。

例えば、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の発生直前の確率値は0.02%〜8%でした。2016年の熊本地震の発生直前の確率値はほぼ0%〜0.9%でした。特に内陸型地震は発生間隔が数千年〜1万年程度と長く、30年程度の地震発生確率値は大きな値とはなりません。ですが地震発生確率値が小さくても、大きな地震は実際に発生しています。

日本において大地震や大津波は歴史上何度も繰り返されており、確実なことは「近い将来に、必ず日本のどこかで大きな地震が発生する」ということです。そもそも日本は地震大国であり、常日頃から防災意識を持っておく必要があります。