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《災害時において制約を受ける「要配慮者(災害弱者)」とは》
防災対策を考えるとき、防災グッズを揃えたり食料や水の備蓄といった一般的な防災対策はもちろん重要ですが、そもそも必要な備えや防災対策は人それぞれという面があり、性別や家庭環境によっても異なるものです。
災害時の避難行動や被災後の避難生活において制約を受け、支援が必要となる人々は、一般的に「災害弱者」や「要援護者」「要支援者」などと呼ばれます。災害対策基本法の第八条では、これらの人々は「要配慮者」と定義されており、災害発生時の避難等に特に支援を要する人々は「避難行動要支援者」と呼ばれます。
- 心身障害者(肢体不自由者、知的障害者、内部障害者、視覚・聴覚障害者)
- 高齢者
- 乳幼児や妊産婦
- 傷病者
- 日本語の理解が十分でない外国人
- 避難所運営においては、性的マイノリティ(LGBTQ)の人々にも配慮が必要
各自治体で要配慮者・要援護者に対するマニュアルが作成されていますが、十分といえる状況ではなく、公助には限界があります。災害が起きたら避難所へ頼るという前提ではなく、基本的には可能な限り在宅避難をベースとして、各家庭に合わせた「自助」としての防災対策や備蓄を充実させる必要があります。
自分や家族(ペットを含む)にとって欠かせないもの、それがないと命に関わるものは何か?と考えて備えることが重要です。
《要配慮者の防災対策》
①病気を持っている方(内部障害者も含む)
- 予備の薬や注射は1週間分の予備を備える
- お薬手帳は必ず持ち歩く
- 人工肛門のパウチなど、必要な医療用装具の予備を備える
- 在宅酸素療法では、電源確保や予備のボンベについて考える
- 血液透析を受けている方は、透析条件や代替医療機関について把握しておく
- コンタクトレンズ使用者もメガネの予備は持っておく
持病で薬を処方されている方は、最低でも1週間分の予備は備えておくべきです。特に1型糖尿病でインスリン注射を使用している方、難病をお持ちで免疫抑制剤や特殊な薬剤を使用している方など、薬剤中断により著しく身体の状態を損ねたり、命に関わる可能性がある方は必須の備えです。
大震災で病院や医院が被害を受け、カルテや薬の情報が失われることもあります。その場合、お薬手帳など薬歴がわかるものがあれば、医療機関で処方箋をもらえなくても臨時対応として薬を薬局などでもらうことができます。2011年の東日本大震災では、お薬手帳の重要性が再認識されました。お薬手帳は必ず持ち歩くようにしましょう。
スマートフォンにお薬情報の写真を入れたり、アプリで登録しておくのもおすすめです。
人工肛門や人工膀胱を使用されている方は、装具の予備が必要です。
呼吸機能低下などで在宅酸素療法を使用している方は酸素ボンベや酸素濃縮機・人工呼吸器の電源確保も考える必要があります。例えば、酸素濃縮器など在宅酸素事業を行なっている「帝人ファーマ株式会社」では、緊急時や災害時の体制を整えており、実際2011年の東日本大震災では、社を挙げて被災地の在宅酸素療法を受ける患者さんを支援したり、被災地の中核病院に酸素ステーションを臨時に開設したりしました。契約されている会社の緊急時の体制など、今一度確認しておきましょう。
人工透析を受けている人は、透析中断は命に関わるため災害時に透析を代替してくれる医療機関の情報収集をしておくべきです。また透析カードや透析手帳など透析条件が分かるものを携帯し、最低でも体重(ドライウェイト)は把握しておきましょう。
もう一つ、忘れがちで重要なことは、「メガネ」の備えです。視力の悪い方は、メガネがないとそもそも安全な避難や行動を取ることができません。コンタクトレンズを使用している方でも、災害時の水不足などでケアし辛い場合があり、必ず予備のメガネを準備しておきましょう。
②高齢者
- 杖
- 歩行器
- 車いす
- 補聴器、交換用電池の予備
- オムツ、衛生用品
- 嚥下機能に合わせた食料
杖、歩行器、車椅子、聴力低下があれば補聴器と交換用電池の備えが必要です。介護を要する場合、オムツや衛生用品などが必要であり、嚥下(飲み込み)機能が低下していれば、嚥下機能に合った食事を備蓄しておきましょう。
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③乳幼児や妊産婦
- オムツ
- 粉ミルク
- 衛生用品
- 離乳食
- お菓子
- 避難所へ避難する場合は、絵本や音の出ないオモチャ
- 母子手帳
- 生理用品
オムツ、粉ミルク、衛生用品、離乳食、子供用お菓子、母子手帳、生理用品などの備蓄が必要になります。避難所へ避難する可能性がある場合、非常用持ち出し袋には子どものおもちゃや絵本(音が出ないものが推奨)を入れておくとよいでしょう。
④その他
- 食物アレルギーがあれば、アレルギー対応食の準備
- 宗教上の理由などで食べられない物がある場合、対応した食事(ハラール食など)の準備
食物アレルギーがある方は、アレルギーに対応した食料の備蓄をします。宗教上の理由などにより食べられない食べ物がある場合、それに対応した食事(ハラール食など)を備えておきましょう。
《ペットの防災》
- ペットの防災は飼い主の責任
- ペットフードや衛生用品の日常備蓄(ローリングストック方式がおすすめ)
- 最寄の避難所がペット同伴に対応しているかを確認しておく
ペットの防災は飼い主の責任(「自助」が基本)です。ペットフードや衛生用品の日頃からの備蓄が重要です。また避難所は、ペット同行に対応している所と対応していない所があります。最寄りの避難所がペットに対応しているかなどは普段から確認しておきましょう。
2011年の東日本大震災では、地震、津波、原子力災害により、ペットが自宅にとり残されたり、飼い主とはぐれたり、避難生活で飼育できなくなったりして、ペットが放浪する例が多数生じています。また飼い主とペットが共に避難(同行避難)できた場合でも、多くの被災者が共同生活を送る避難所においては、ペットの取扱いに苦慮する例も多数見受けられています。
参考:環境省「災害、あなたとペットは大丈夫?人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」
《女性の防災対策》
「要配慮者」とは異なりますが、女性ならではの防災必需品もあり、災害時は女性の防災についてもしっかりと考える必要があります。生理用品、スキンケア用品などは日頃から多めに備蓄しておくと安心です。
- 生理用ナプキン
- おりものシート
- スキンケア用品
- ヘアゴムやヘアクリップ
- クシや鏡
- 避難所における着替え、授乳、洗濯物(下着など)のプライバシー問題
- 避難所運営や復興支援における、女性の参加
特に災害時は、精神的不安・ストレスにより生理が乱れることもあり、生理用品は必須と言われています。また災害時におりものシートを使えば、おりものによるかぶれや炎症を防いだり、洗濯できない状況で同じ下着でも清潔に過ごすことができます。
またナプキンを備蓄しておけば、怪我をしたときの傷当てや止血目的など本来の使用用途以外にも使うこともできます。
災害時は「男は仕事、女は家事・家庭」といった男女役割分担意識が強くなりがちです。これまで防災や災害復興は男性が主導で行う傾向が強く、女性視点での意見が反映されないまま、防災対策や避難所運営、復興支援への取り組みが進められてきました。
その結果過去の大災害において、女性は必要な物資の不足、避難所での女性目線での配慮の欠如、男女役割分担による負担増大、性暴力被害など様々な問題に直面してきています。これまでの経験から、防災や災害復興における男女共同参画の重要性が認識されるようになっていますが、女性の防災対策はまだまだ盲点となりやすいのが現状です。
《「自助」の精神で、自分と家族に必要なものを備える》
このように、人や家族構成によって必要な備えは十人十色です。そして防災対策は、自分達の身は自分達で守るという「自助」が基本となります。自分と守るべき家族に本当に必要なものは何か?と考えて備えることが非常に重要です。