防災対策、何から始めるか?〜防災対策のはじめかた〜

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《防災への備えに欠かせない3つの「助」》

災害へ備える時、「自助」「共助」「公助」の3つを考える必要があります。
「自助」とは災害時にまず自分や家族の身を守ることをいい、「共助」とは地域や周囲の人達と協力して助け合うことをいい、「公助」とは市町村や公的機関による救助や援助のことをいいます。

私の場合、災害発生時はまず自分と家族の身を第一に守り(自助)、その上で周囲の人々と助け合い(共助)、医師の立場としても他者の力となりたい(公助の一部を負担)と考えています。
防災対策と聞くと真っ先に思い浮かべるのが、「防災グッズを◯◯点詰め合わせた非常用リュック」や、「お湯や水を注ぐだけで食べられる非常食」を購入することではないでしょうか。
これらも非常に有用で重要な対策ではありますが、本来防災対策はもっと身近なところから考える必要があります。

《防災対策の目的》

そもそも個人における防災対策の究極の目的とは、自分と大切な家族が死なないこと、そして災害発生から復興するまでを生き延びることです。災害発生のニュースをみると、何人の方が亡くなり、何人の方が負傷し、何人の方が被災生活を送っているかと全体像に目が行きがちですが、被災した当事者にとっては自分と家族が死なずに生き延びることができたか否かが何よりも重要です。

自分と家族が死なず生き延びるために必要な対策を考える必要があります。

《まず、自宅の耐震対策を》

災害の代表といえば、巨大地震です。特に日本は地震大国でもあります。重要なのは、当たり前ではありますが災害は人間の都合に忖度してくれないということです。つまり、24時間365日いつでも発生する可能性があります。特に地震は他の災害と異なり予想が難しく、瞬間的に発生し、発生した直後に状況次第では死亡リスクが大きい災害です。

日本に住んでいる以上、巨大地震に遭遇する可能性からは逃げられません。大きな地震が発生した時に家具や重量物の下敷きになって死亡したり受傷しないようにする環境を整える必要があります。災害発生直後に死亡してしまっては、これまで備えた全ての防災対策は無駄になります。

まず、ご自宅の建物の安全性を知ることから始めてみてください。1981年6月1日以降の新耐震基準を満たした建物であれば、巨大地震によりすぐに倒壊する可能性は低いと考えられており、発生直後に建物の倒壊により死亡したり自宅に住み続けられなくなる可能性は低くなります。一度、ご自宅の建築年数を調べておくとよいでしょう。

具体的な耐震対策としては家具を固定し、重いものは高い所には置かず、揺れで食器など物が散乱しないようにすることで、死亡やケガを負うリスクを減らすだけでなく、災害後に在宅避難(後述)を送ることができる環境にすることができます。

自宅の地震対策についてはこちら ↓

自宅の地震対策 〜家具固定の重要性|ケガをしない・死なないための環境作り|耐震グッズ|ガラスの飛散防止対策|防災対策の基本〜

《災害リスクを知る》

災害対策基本法において災害とは、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう」と定義されています。2021年現在流行している新型コロナウイルス感染症も、直接的被害や経済損失を考えると、災害として認識できるかもしれません。

自宅、職場、通学通勤路など自分が被災する可能性がある場所の災害リスクを把握しましょう。最低でも自宅の災害リスクだけは必ず把握しておいてください。

国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、「重ねるハザードマップ」「わがまちハザードマップ」というものが無料で閲覧できます。「重ねるハザードマップ」では地図から詳細な災害リスクを検索することができ、「わがまちハザードマップ」では全国の市町村が作成したハザードマップを検索することができます。
時々情報が更新される時もあるため、年に1~2回は確認しておくと良いでしょう。

《災害が発生したらどうするか?を想定する》

ハザードマップで自宅の災害リスクを把握したら、その災害が発生した場合に逃げるか、留まるかを想定します。巨大地震が発生し津波のリスクがある場所に住んでいる場合はすぐに逃げる必要がありますし、高潮や土砂災害のリスクがある場所に住んでいる場合は準緊急的に避難する必要があります。緊急避難が必要な場合、ここで初めて「防災グッズを◯◯点詰め合わせた非常用リュック」が役に立つことになります。

≪防災安全協会認定 大容量30Lリュック採用≫ 防災セットSHELTERシリーズ

災害が発生しても必ずしも避難が必要とは限らない場合もあります。例えば私の場合、マンションの中高層階に住んでおり、ハザードマップでは数メートルの洪水または内水氾濫のリスクがありますが、津波・高潮、土砂災害のリスクは低くなっています。新耐震基準を満たしたマンションのため、巨大地震でも倒壊の可能性は低く、たとえ豪雨や台風で洪水・内水氾濫が発生したとしても自宅にいれば死亡のリスクは極めて低いといえます。自宅マンションが一定期間孤立しても、非常用トイレや食料などを備えていれば復旧するまで在宅避難が可能です。そのため私は災害時は在宅避難を心に決めています。

《在宅避難の準備を》

自宅が津波、浸水、土砂崩れ、倒壊などの恐れがなく、室内が生活に耐え得る状況で、自分や家族に大きな怪我もなければ在宅避難を積極的に考えるべきです。

在宅避難のメリットとしては
・多少不便があっても住み慣れた自宅で避難生活を送れる。
・プライバシーが確保される。
・トラブルや犯罪被害のリスクが低い。
・持ち出す必要がないため、自宅にあるものを使用・消費できる。
・他者と接する機会が少ないため感染症のリスクが少ない

逆に在宅避難のデメリットとは
・避難所のように最新情報が手に入りづらいことがある。
・食料や水は自ら手に入れる(備えておく)必要がある。

だからこそ、事前の備えが重要となるわけです。2011年の東日本大震災では電気の復旧に1週間以上、水道の復旧に10日以上かかった地域もありました。備蓄する目安としては最低でも1週間の備蓄が望ましいです。

簡単・最強の備蓄法「ローリングストック」 〜防災を日常生活に取り入れる心構えとしても〜 非常用トイレの備え 〜出るものは我慢できない!災害時のトイレ問題。排泄への備え〜 カセットコンロとカセットガス 〜燃料を安全に備蓄でき、災害時でも温かい食事にありつくために〜

《おわりに》

近年ではほぼ毎年自然災害が発生しており、災害大国日本において防災対策は避けては通れないものです。
地震調査研究推進本部地震調査委員会では、マグニチュード8~9クラスの南海トラフ地震(想定最大死者数 約32.3万人)の30年以内の発生確率が70~80%、マグニチュード7程度の首都直下地震(想定最大死者数 約2.3万人)の30年以内の発生確率は70%程度と予想しています。ほぼ必ず起こると言っても過言ではないですし、今この瞬間に発生してもおかしくない状態といえます。
ご自身の命、ご家族の命を守るためにも、被災後の生活を乗り切るためにも、防災対策を日常に取り入れて日々の防災を意識して頂きたいと思います。