災害時こそ口腔ケア(オーラルケア)が重要 〜誤嚥性肺炎を予防する|災害関連死|災害時の歯みがき方法〜

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我々が普段何気なく行っている歯みがきですが、災害時には歯みがきなど口の中を清潔に保つ口腔ケア(オーラルケア)は非常に重要な行為となります。

たかが歯みがき、されど歯みがきです。災害時になぜ口腔ケアが重要になるのか、日頃の備えはどうすればよいのか、少ない水でどう歯磨きをするのかについて紹介します。

【災害時は誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすい】

食べ物による誤嚥性肺炎のイメージ

災害が発生し、避難所生活や水が貴重になる状況においては、歯みがきなど口腔ケアをためらうことが多く、口の中が不潔になりがちです。

口の中で細菌が繁殖し、それが気管から肺へ侵入することにより、「誤嚥(ごえん)性肺炎」を引き起こします。災害時は疲れ、ストレス、低栄養で免疫力が低下しやすい状態であり、特に高齢者の方では誤嚥性肺炎発症の危険性が高くなります。

高齢者の誤嚥性肺炎は死亡率が高く、特に災害時は医療体制の混乱から初期治療が遅れやすいため、誤嚥性肺炎により死亡する危険がさらに高くなります。そのため、災害時であっても口腔ケアによる肺炎予防が非常に重要です。

【災害関連死になる誤嚥性肺炎】

大地震で建物倒壊による圧死・窒息死、津波に巻き込まれて溺死するなど、災害に直接関係する死とは別に、その後の避難生活などで病気を発症して死亡したり、持病が悪化することで死亡することを「災害関連死」といいます。震災関連死といわれることもあります。

避難生活において誤嚥性肺炎で死亡することは災害関連死に該当します。

1995年の阪神淡路大震災では災害関連死の24%が肺炎で、そのほとんどが誤嚥性肺炎であったと考えられています。また2011年の東日本大震災でも、震災発生から1〜2週間後の死亡原因として、肺炎が最も多かったという報告があります。

この他の災害においても、誤嚥性肺炎による災害関連死は常に多数発生しており、非常に危険な病気であるという認識が必要です。

【災害時に便利な歯みがき・口腔ケアの方法】

引用:サンスター株式会社「災害時のお口のケア紹介ポスター」

災害時は水は非常に貴重になりますが、歯みがきや口腔ケアは必ず実施する必要があります。災害時に便利な歯みがき・口腔ケアの方法を紹介します。

水が少ない時の歯みがきの方法

引用:日本歯科医師会 ポスター「非常時の口腔健康管理」

一般社団法人 日本口腔ケア学会では、災害時の水の使用を最小限にしたい時の口腔ケアについて紹介しています。

水が少ない時の歯磨きの方法
  1. 水で少し湿らせたティッシュペーパーを準備し、口角切れや口唇の亀裂を予防するために、口腔ケア開始時に軽く口唇を拭きます。
  2. 洗口2回分の水(約30mL)をコップ A(最後に洗口で使用)として準備します。
  3. 別のコップ B(歯ブラシすすぎ用)に約20mL の水を用意し、その水で歯ブラシを濡らしてから口の中へ入れ、歯みがきを開始します。(適宜「加湿」しながら磨くのがポイント)
  4. 歯ブラシが徐々に汚れてくるので、1 のティッシュペーパーで歯ブラシの汚れをできるだけ吸い取り、3 のコップ Bで歯ブラシをすすぎ、また歯みがき、これを小まめに繰り返します。
  5. 最後に、2 のコップ Aの水で2回洗口します(1回あたり15mL)。30mLを一気に含むのではなく、2回に分ける方が圧倒的にきれいになります。

※日本口腔ケア学会「水の使用を最小限にしたい場合の口腔ケア」を元に編集

この他、日本口腔ケア学会のホームページでは、要介護者嚥下障害のある方の口腔ケア方法についても紹介されています。ご家族に該当される方がいる場合、一度日本口腔ケア学会のホームページを参照しておくとよいでしょう。

歯ブラシがない時の口腔ケアの方法

避難所などで歯ブラシがないということも想定されます。その場合、食後に30mL程度の水やお茶でしっかり口の中をゆすぎ、ハンカチなどを指に巻いて歯ブラシ代わりに歯をぬぐうと効果があります。

ハンカチの代わりにノンアルコールタイプのウェットティッシュを指に巻いて歯ブラシ代わりとするのもおすすめです(成分に注意し、注意書きをよく読みましょう)。

歯磨き用のウェットティッシュも販売されています。避難所へ行く可能性を考え、非常用持ち出し袋には、歯磨き用ウェットティッシュを入れておくことをおすすめします。

唾液には、口の中の汚れを洗い出す働きがあります。水分をしっかりと摂取し、あごの付け根・耳の真下の部分(唾液を分泌する唾液腺があります)をマッサージしたり温めたりすることで、唾液の分泌を促してくれます。

キシリトール入りシュガーレスのガムを食後に噛むことも有効です。こちらも唾液の分泌を促すことで、口の中を清潔に保ちやすくなります。

デンタルリンスや洗口液は災害時に非常に便利

デンタルリンス洗口液を、歯みがき粉の代わりに液体歯みがきとして使うこともできます。

適量(約10mL)を口に含み、20秒ほどすすいで、口腔内に行き渡らせた後にブラッシングします。ブラッシング後は水ですすぐ必要はありません。味や香りが気になる場合は、少量の水ですすいでもかまいません。

液体歯みがきには殺菌成分が含まれているため、口腔内の菌を減らすのに非常に有効です。イソジンガーグルなどのうがい薬も、口腔内の菌を減らしてくれる作用があります。

普段からデンタルリンスや洗口液を使う習慣がある方は、常に1つ未開封の在庫を確保しておく「ローリングストック」で備蓄しておくことで、普段の生活の中で防災対策をすることができます。

普段から使わない方は、デンタルリンスや洗口液を使う習慣をつけてローリングストックで備蓄し、日常生活に防災を取り込んでみるのもおすすめです。

ローリングストックについてはこちら →

簡単・最強の備蓄法「ローリングストック」 〜防災を日常生活に取り入れる心構えとしても〜

内科医 × 防災士の筆者がおすすめする、洗口液 ウエルテック「コンクールF」

筆者が所有する「コンクールF」。ミニサイズのは当直・旅行用に持ち運んでいる。

災害時の口腔ケアに非常に有用であり、かつ普段使いにも便利なのが、ウエルテックの薬用マウスウォッシュ「コンクールF」です。私も実際に愛用しています。

災害時の口腔ケアに非常に有用であり、かつ普段使いにも便利です。

「コンクールF」は一般的な原液のまま使用するデンタルリンスと異なり、水で薄めるタイプになります。25〜50mlの水に5〜10滴垂らして使用するため、1本で約400〜600回程度使用することができ、コストパフォーマンスが非常に良いところも特徴です。

また殺菌力も強く、含有されているグルコン酸クロルヘキシジンが細菌の繁殖を最大12時間抑制してくれます。実際の医療現場でも使われており、インターネットなどで多くの歯科医の方が推奨している点も重要なポイントです。

災害時にはコンクールFを原液のまま2〜3滴歯ブラシにつければ、歯みがき粉の代用としても使用でき、口のゆすぎに使う水も少なくすることができます(ただし、正式にメーカーが歯みがき粉代わりの使用を推奨しているわけではありません)。

少量の水で口腔ケアが可能であり、コストパフォーマンスが良く、1本で長持ちし、殺菌力も強いことから、普段使いから災害時まで非常に有用な製品です。

我が家では普段使いするため常にローリングストックしており、当直用・旅行用には小さいタイプを持って行くようにしています。

注意点としては、コンクールFは取り扱っていない薬局もあります。ロフトやハンズで取り扱っていることが多く、私はロフトでよく調達しています。小さいコンクールFはネットショップでないと手に入りづらいかもしれません。

《乳幼児には子ども用のオーラルケアの準備を》

小さな子どもがいる家庭では、子どもの歯みがき対策も考える必要があります。

大人用の歯みがき粉やマウスウォッシュは刺激が強く、子どもには使えないこともあります。

赤ちゃん用の歯みがきティッシュ子ども用の歯みがき粉やマウスウォッシュは、大人用とは別にしっかりと備えておきましょう。

《入れ歯のケアも重要》

入れ歯を使用している方は、入れ歯のケアについても備えておく必要があります。

入れ歯用のウェットティッシュ入れ歯洗浄剤は、「ローリングストック」で常に在庫を確保しておくようにしましょう。

《日々の歯みがきにも防災の意識を持ちましょう》

このように歯みがき・口腔ケアは、身だしなみとしてだけではなく、災害時においては命を守る行為と言えます。

普段から行っている行為だからこそ、少し防災を意識するだけで災害対策をすることが可能です。次に歯ブラシや歯みがき粉、デンタルリンスなどをお店に買いに行く時は、1つ多めに買ってみるといった行動から、災害時の口腔ケアを意識してみましょう。