防災にポータブル電源とソーラーパネル 〜停電してもベランダ発電で電源確保〜

Pocket

《災害時の電源確保の重要性》

現代社会に生きる我々にとって、電力は欠かせないものとなっています。しかし自然災害による停電は度々発生し、復旧までに長期間かかることもしばしばあります。

2011年3月の東日本大震災においては、停電発生から3日で約80%が復旧し、8日で約94%、地域によっては3ヶ月以上復旧に時間を要した所もありました。

2019年9月の台風15号では、電力施設の被害により千葉県において大停電が発生し、最長で2週間以上の停電が続きました。

災害時の情報収集ツールとして重要なスマートフォンの充電だけでなく、在宅医療機器の電源確保、暑さや寒さ対策のための電源確保の手段として、防災的な観点からもポータブル電源が注目されています。

《ポータブル電源とは?》

ポータブル電源は、ポータブルバッテリーとも呼ばれ、いわゆる家庭のコンセントと同じAC(交流)出力も備えた、大容量のモバイルバッテリーのような製品です。大容量のリチウムイオンバッテリーを備えており、DC(直流)電力の出力と、インバーターを介してAC(交流)電力へ変換して出力してくれます。

USBなどでパソコンやスマートフォンの充電ができることはもちろん、コンセントを利用して電化製品も使用することができます。

ポータブル電源は手軽に持ち運びすることができるため、日常生活での使用から、近年流行りのキャンプや車中泊など多彩なシーンで利用されます。

それだけでなく、自宅に備えておけば停電しても家電を使用することができるため、災害時の電源確保としても注目されています。また対応するソーラーパネルがあれば、晴れの日に太陽光で実用的な発電をしてポータブル電源を充電することができ、災害時の長期間の停電でも安心です。

《Jackery(ジャクリ)のポータブル電源とソーラーパネルを購入》

出典:Jackeryホームページ

ポータブル電源としては最も有名なアメリカのメーカー「Jackery(ジャクリ)」の、容量191,400mAh / 708Whの「ポータブル電源 708」と、太陽光で最大100Wの発電・充電ができるソーラーパネル「SolarSaga 100」のセットを購入しました。セットで定価 108,600円とそれなりに高い買い物でしたが、ポイント還元率が高いタイミングを狙ってお得に購入しました。

一般社団法人防災安全協会が認証する「防災製品等推奨品」に登録されています。

定格出力は500W動作温度は-10℃〜40℃です。

満充電までにかかる時間については、コンセントで約5時間シガーソケットで約13時間100Wソーラーパネルで約11時間(天気次第)となっています。

《ポータブル電源の選び方》

容量の目安

ポータブル電源のバッテリー容量は、「Wh(ワットアワー)」で表されます。「W(ワット)」は1秒あたりに消費される電力量を示し、「Wh(ワットアワー)」は1時間の電気使用量を意味します。

例えば、消費電力60Wの機器を5時間使用したとすると、60W × 5h (時間) = 300Whとなります。逆に、300Whの容量のポータブルバッテリーであれば、消費電力60Wの機器を5時間使用できるとも言い換えることができます。

使用する機器や台数によって異なりますが、日帰りやデイリーユースなら200Wh以上、キャンプや車中泊なら350Wh以上、防災目的なら500Wh以上が目安です。

ポータブル電源の容量の目安
  • 日帰りや1日程度の使用:200Wh ~
  • キャンプや車中泊:350Wh ~
  • 連泊するキャンプや車載冷蔵庫などを使用する車中泊:400Wh ~
  • 防災目的としての使用を想定:500Wh ~

容量が大きいもの程、長時間の使用が可能で、消費電力の大きな家電の使用も可能となります。しかし反面、バッテリーも大きく・重くなり、価格も高額になります。防災的には容量は大きければ大きい程良いですが、普段使いや持ち運びの程度、予算、保管スペースなどを総合的に考えて容量を選びましょう。

AC(交流)出力の波形

出典:Jackeryホームページ

AC出力の波形には、「純正弦波」「修正正弦波(疑似正弦波)」「矩形波」の3種類があります。

比較的低価格帯のポータブル電源では、「修正正弦波」「矩形波」が採用されていますが、多くの家電製品や電子機器は「純正弦波」を前提に設計されているため、「修正正弦波」「矩形波」のAC出力を使うと、使えなかったり故障の原因となる場合があります。

家庭のコンセントと同じ出力で、精密機械などにも安心して使える「正弦波」のAC出力を持つ製品を選ぶようにしましょう。

定格出力を確認する

「定格出力」とは、ポータブル電源が安定して出力できる電力の量を意味します。

例えば、私が購入した「Jackery ポータブル電源 708」の定格出力は500Wであり、消費電力が合計500Wまでの電化製品に対して給電することができます。

電化製品を使用する際に消費する電力量には「消費電力」「定格消費電力」があります。

「消費電力」は、電化製品が一般的な稼働で消費する電力量を意味します。

「定格消費電力」は、電化製品の機能を最大限に使用した時に消費する電力量を意味します。

通常、電化製品には消費電力の表示が義務づけられており、製品の目立たない場所にシールまたは直接記載されています。ポータブル電源の定格出力と、災害時に使用する可能性がある電化製品の消費電力・定格消費電力は確認しておきましょう。

また冷蔵庫など一部の電化製品では、スイッチを入れた直後に「突入電流」が発生し、公称消費電力の3〜7倍程度になる場合があります。ポータブル電源によっては最大出力を上回り、電力が調節されて低くなったり、保護回路が作動して電源が遮断され、電化製品が起動できない場合もあるので注意が必要です。

信頼性の高い製品を選ぶ

ポータブル電源はリチウムイオン電池が内蔵されており、いわばエネルギーの塊です。故障、損傷、不適切な使用によりそのエネルギーが暴走すれば、感電や火災の原因となり、実際ポータブル電源が原因の火災は毎年一定数発生しています。

多くの電化製品に示されている「PSEマーク」は、「電気用品安全法」の規制対象製品で、基準に適合した電化製品にのみ掲示され、安心・安全な製品としての目安になります。しかし、電気用品安全法の規制対象製品であるリチウムイオン蓄電池は、出力が原理上直流に限られており、交流が出力できるポータブル電源は、電気用品安全法上のリチウムイオン蓄電池に該当しないため、規制対象にはなっていません。

そのため、ポータブル電源に関する安全規格は日本国内には存在しません。

ただし、ポータブル電源に付属しているACアダプターは電気用品安全法の規制対象となっています。ACアダプターにPSEマークが付いているかどうかは、その製品の信頼性の目安となります。

私が購入したJackeryのポータブル電源は、リチウムイオン電池の国際基準の一つである「UN38.3」(国連特別輸送試験)の認証を取得しています。こういった国際基準を取得しているかどうかも、信頼性の目安となります。

製造・販売元がはっきりしているメーカーの製品を選び、また回収・リサイクルに対応しているか、リコール対象製品となっていないかも確認しましょう。

防災的にソーラーパネルはあった方が良い。その他の充電方法も確認しておく。

自然災害において停電は長期間に及ぶ可能性があります。そのため、十分な発電力を持つソーラーパネルもセットで購入するのがおすすめです。メーカーによってコネクターの形状が異なることもあり、なるべく同じメーカーの製品を購入しましょう。

Jackery「ポータブル電源 708」に付属しているAC充電と車載用充電シガーアダプター

またポータブル電源の充電には、家庭のコンセントから充電できるACアダプターだけでなく、車のシガーソケットから充電できるシガーアダプターも付属していると、いざという時に車で充電することもできるため防災的にも安心です。

その他

ポータブル電源の出力端子の種類と数や、LEDライト、ワイヤレス充電機能などの有無も確認しておきましょう。

《実際に自宅マンションでベランダ発電をやってみた》

いざ、ベランダ発電!

停電を想定し、実際に自宅マンションのベランダでソーラーパネルによる発電を行いました。

私のマンションのベランダは西向きです。この日は午前が薄曇りで、午後は晴れでした。薄曇りで直射日光が当たらない午前は7〜10W程度の発電量で、直射日光が当たった午後は75W程度の発電ができました。

充電前 46%
充電後 62%

この日は朝から夕方までで、ポータブル電源の表示では46%→62%の発電ができました。1日のベランダ発電で、おおよそ112Whの発電ができた計算となります。モバイルバッテリーの容量でよく表記されるmAh(ミリアンペアアワー)へ換算すると、おおよそ30,200mAhとなります(リチウムイオン電池の場合「Wh = 3.7 (V) × mAh ÷ 1000」という計算式で換算されます。)。

ちなみに私が所有している「iPhone 13 Pro」の電池容量が約3,095mAhと言われています。

一般的な容量が大きめのモバイルバッテリーが10,000mAhですから、1日のベランダ発電により大容量のモバイルバッテリー3本分程度の発電ができたとも言えます。停電が続く大きな災害時には非常に心強い発電力です。

自転車の荷台などに使うゴムロープで風対策をしました

この日は風は強くはありませんでしたが、念のため100円ショップに売っている自転車の荷台などで使うゴムロープでエアコンの室外機に固定し、強風で飛ばされないように風対策をしました。

マンションの場合は窓やベランダの向きが決まっているため、太陽の動きに合わせて方角を変えるには制限がありました。そのため、東〜南〜西まで太陽の向きに合わせて移動させやすい一軒家と比べると、やや効率は落ちると感じました。

反面、マンションのベランダ発電であれば人は侵入しにくいため、災害時のポータブル電源とソーラーパネルの盗難リスクは低いと感じました。一軒家で、特に1階屋外で発電を行う場合、盗難対策も考える必要があります。

《災害時・停電時にポータブル電源を何に使うか》

電化製品の消費電力の目安

先に述べたように、ポータブル電源の容量は「Wh(ワットアワー)」で表され、使用する電化製品の消費電力「W(ワット)」で割った時間だけ、理論上は使用できます。以下に主な電化製品の消費電力を示します。

スマートフォン5〜30W
扇風機30W
電気ポット35〜1000W
電気毛布50〜80W
パソコン50〜300W
液晶テレビ(40型)70W
エアコン400〜3200W
炊飯器100〜300W
IH調理器120〜3000W
冷蔵庫150〜500W
ドライヤー600〜1200W
電気ファンヒーター600〜1200W
電気ストーブ700W
電子レンジ1000〜1500W
電気ケトル1200W
ホットプレート1300W
主な電化製品の消費電力量

これらの消費電力量を見て分かるように、大型の電化製品をポータブル電源で長時間使用するには、かなり大容量のポータブル電源が必要となります。

一時的な停電など、短時間であれば消費電力の大きい電化製品を動かすこともあり得ますが、長期間の停電が続く災害では、動かす電化製品を選別する必要があります。

災害時に優先して給電したいもの

①在宅酸素療法などの医療機器の電源確保

写真はCPAP(持続陽圧呼吸療法)

最もポータブル電源が必要な状況は、それがないと命に関わったり、身体機能が低下してしまう医療機器などを使用している場合です。例えば在宅酸素療法などを受けている方は、電源を確保しておかないと酸素濃縮器の充電が切れて命に関わる可能性があります。

②情報収集源としてスマートフォンの充電

次に優先させたいことは、情報収集や家族の安否確認の手段となるスマートフォンの電源確保です。ポータブル電源以外にも、モバイルバッテリーや乾電池式モバイルバッテリーも備えておくとよいでしょう。

③暑さ・寒さ対策に、扇風機、電気毛布の電源として

扇風機は消費電力30Wくらい
電気毛布は消費電力50〜80Wくらい

暑さ、寒さ対策も重要です。脱水、熱中症、低体温症はやはり命に関わる可能性があります。また、停電しても可能な限り快適に生活するためにも、温度管理は非常に重要です。

暑さ対策としておすすめなのが、消費電力が少ない扇風機サーキュレーターです。寒さ対策としては電気毛布が消費電力が少なめです。700Whクラスのポータブル電源で10〜20時間くらい使用することができます。

ポータブル電源でエアコンが使用できればベストですが、エアコンは消費電力が大きく、200V電源でないと稼働しない製品もあります(ポータブル電源のAC出力の多くは100V)。数日〜1週間の停電時に使用するにはあまり現実的ではありません。

また、電気ファンヒーターや電気ストーブも消費電力が多く、長時間の稼働ができません。暖を取るにはカセットガスを利用したカセットガスストーブやカセットガスファンヒーターを合わせて備えておくのがおすすめです。石油ストーブを使う地域では、灯油の備えも考えておきましょう。

大容量のポータブル電源を所有していれば、IH調理器や電子レンジなど消費電力が大きな電気調理器を使うこともできますが、そうでなければ災害時の調理方法としてはカセットコンロを備えておく方が無難と言えます。

《ポータブル電源があれば、災害時の生活の質が上がる》

ポータブル電源とソーラーパネルのセットは決して安い買い物ではありませんが、このように一家に一台ポータブル電源があると、災害などで停電が発生していも質の高い生活を送ることができるようになります。災害時の電気の備蓄について、ぜひ真剣に考えてみましょう。

《参考:色々なポータブル電源のメーカー》

【Jackery Japan】

【EcoFlow】

【Smart Tap】

【BLUETTI】