目次
《火山噴火の仕組み》
現在日本には111の活火山があり、世界の活火山の約1割が日本に存在しており、世界有数の火山国になっています。
噴火とは、地下深くにある溶けた岩石(マグマ)がプレートに圧迫されることにより、地表に噴出する現象です。活火山とは、「おおむね過去1万年以内に噴火した火山および現在活発な噴気活動がある火山」と気象庁では定義されています。
《噴火のタイプ》
噴火には大きく分けて「マグマ噴火」「水蒸気噴火」「マグマ水蒸気噴火」の3つの種類があります。
《マグマ噴火》
地下のマグマそのものが噴き出る噴火です。マグマの構成成分や、噴火の様子などによりさらに様式が分かれます。
【ハワイ式噴火】
マグマの粘性が低く、サラサラとしたマグマが噴出する噴火。ハワイの火山であるキラウエア火山などでみられます。
【ストロンボリ式噴火】
少し粘性が高いマグマが簡潔的に小爆発を繰り返す噴火です。
【ブルカノ式噴火】
マグマの粘性が高く、噴煙を形成するような爆発的な噴火が一定間隔で起きる噴火。日本のマグマ噴火の多くを占めています。現在の鹿児島県桜島がこの噴火様式です。
【プリニー式】
噴煙が成層圏に到達するような爆発的な噴火が、連続的に数時間~数日続く爆発的な噴火。ローマ時代のポンペイを火砕流により埋めたことで有名な、79年のヴェスヴィオ火山の噴火の様式です。基本的には大規模なストロンボリ式噴火です。日本では1707年の富士山噴火(宝永大噴火)や、1783年の浅間山噴火(天明噴火)がこの噴火を起こしています。2022年1月15日のトンガ海底火山噴火もこの様式と言われています。
《水蒸気噴火》
マグマによって熱せられた地下水が、水蒸気となって膨張し、破壊した岩石とともに噴出する噴火です。事前に地震や地殻変動などを伴わず、予兆がつかみにくいことがあります。2014年に長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山でこの噴火が発生し、登山者ら58名が死亡、5名が行方不明となっています。
《マグマ水蒸気噴火》
地下水や海水が、高温のマグマに直接触れて高温高圧となり、マグマとともに爆発的に噴出し、黒い噴煙を噴き上げる噴火です。
《噴火の規模》
噴火の規模を表す指標として、火山爆発指数(Volcanic Explosivity Index : VEI)が用いられます。0〜8の9段階に区分され、VEI 8が最大規模となります。
大噴火はVEI 4、巨大噴火はVEI 5、超巨大噴火はVEI 6以上とされ、VEI 7, 8は破局(的)噴火やカルデラ噴火と言われることがあります。
他には、マグマ噴出量(Dense Rock Equivalent:DRE)で規模が表現されます。
参考:火山爆発指数(VEI)とVEIで分類した噴火の例について(ウィキペディア「火山爆発指数」)
《日本で発生した、特に代表的な過去の大規模噴火》
【VEI 4:桜島の大正大噴火(1914年)】
20世紀以降、日本で起きた最大の噴火であり、この噴火により噴火前は島であった桜島は、流出した溶岩が大隅半島との間の400mの海峡を埋めて、大隅半島と地続きになりました。
【VEI 5:富士山の宝永大噴火(1707年)】
噴火により富士山体の南東に宝永火口が形成され、噴火は断続的に約2週間続きました。火山灰などにより、主に富士山東側では家屋や倉庫が倒壊・焼失し、田畑は耕作不能になり、用水路が埋まり氾濫や水不足が発生し、深刻な飢饉に陥りました。
【VEI 7:鬼界カルデラ(約7300年前)】
鬼界カルデラは鹿児島県南方およそ50kmの、硫黄島と竹島を含む直径約20kmのカルデラであり、大半が海底に存在します。カルデラとは、大量のマグマが噴出した後に空洞ができ、そこが陥没してできた地形のことです。約7300年前に超巨大噴火(破局噴火)を起こし、火砕流は九州南部にも到達し、九州南部の縄文人を絶滅させ、1000年近く無人の地となったとされます。大隈半島では約30mの津波の痕跡もみられます。
同規模の破局噴火が九州中部で発生した場合、周辺に住んでいる700万人がごく短時間で死亡し、その後の火山灰などで最悪1億人が死亡すると予想されています。
日本には北海道から九州までカルデラが多数存在している(=過去にそこには大きな噴火が起こっている)ことは忘れてはいけません。
参考:国立研究開発法人海洋研究開発機構「鬼界カルデラ総合調査」のページ
《火山噴火で起こる災害》
【大きな噴石】
おおむね20~30cm以上の岩石で、風の影響をほとんど受けずに飛散します。噴火と同時に発生するため、避難までの時間的猶予がほとんどなく、火口から2〜4kmにわたり、影響します。
【火砕流】
放出された大量の破片状の固体物質と火山ガスなどが混ざり合い、温度は数百℃に達し、地表に沿って時速数百km以上の速度で流れる現象です。破壊力が大きく、巻き込まれればまず助かりません。噴火と同時に発生することもあり、噴火情報等を活用した事前の避難が重要となります。
【融雪型火山泥流】
火山活動により火山を覆う雪や氷が溶かされることで発生し、火山噴出物と水が混ざり合って地表を流れる現象です。時速は時速数十kmに達することがあり、谷などに沿って遠方まで流下することがあります。
【溶岩流】
溶けた高温の岩石が、地表を流下する現象です。比較的ゆっくり流れるため、避難までに猶予がある場合もあります。
【小さな噴石・火山灰】
噴石のうち直径数cm程度の、風の影響を受けて遠方まで流されるものを、小さな噴石と呼びます。火口付近では、小さな噴石でも登山者等が死傷することがあります。噴火で放出される比較的細かい、直径2mm未満程度のものを火山灰といいます。風によって流され、遠く離れた広い範囲まで拡散します。火山灰は、農作物、交通機関、電子機器など、様々なものに影響を与えます。
【火山ガス】
噴出する高温のガスのことを火山ガスといい、噴気ともいいます。溶岩や破片状の固体物質などと一体となって噴出するものを含み、水、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素などを主成分としています。火山ガスを吸引すると、呼吸器障害や中毒を引き起こす可能性があります。
また、大量の二酸化硫黄が放出され、成層圏に達すると、太陽光による化学反応によって硫酸の微粒子となり、数年程度成層圏に停滞し、太陽放射を散乱・吸収して地球寒冷化の原因になります。
【火山泥流・土石流】
噴出物と水が混ざり合い、地表を流れる現象を火山泥流・土石流といいます。火山泥流と土石流の区別は難しいですが、降雨により発生する火山泥流のことを土石流をといいます。
【空振(衝撃波)】
噴火・爆発を起こすと「空振」と呼ばれる空気の振動(衝撃波)が発生することがあり、窓ガラスが割れたりと、建物などに被害が出ることがあります。
【津波】
海底火山や海に近い火山の大規模な噴火では、山体崩壊、火砕流の流入、カルデラ形成、爆発による水柱形成、火山性地震が発生し、津波の原因となることがあります。他の原因としては、2022年1月15日に南太平洋のトンガで発生した海底火山の大噴火では、空振により海面が押されたことにより、津波(潮位変化)が発生したと推測されています(この記事を掲載した時点では、気象庁は潮位変化の原因については検証が必要と判断しています)。
《噴火警報・予報》
気象庁は全国111の活火山を対象として観測・監視し、噴火警報・予報を発表します。警戒が必要な範囲によって、火口周辺、住居地域、周辺海域(海底火山)に分けられます。なお、居住地域の噴火警報は、特別警報に位置づけられています。
また、噴火警戒レベルが運用されている48火山(令和3年4月時点)では、噴火警戒レベルが5段階に分けられています。気象庁から噴火警報・予報を発表された場合、避難計画等に基づき、市町村等の防災機関は入山規制や避難指示等の防災対応を実施します。
噴火警報・予報の他には、噴火速報、降灰予報、火山ガス予報などが発表されることがあります。