災害時の食料事情 〜災害食と行動食と備蓄食〜

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《災害時の「食」について》

防災対策の備蓄法、心構えとして最も効率的であるのが、消費しながら備蓄する「ローリングストック法」です。そんな災害時の「食」についてその言葉の意味合いをもう少し深く考察したいと思います。

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防災といえば「非常食」という言葉を思い浮かべると思いますが、「非常食」は定義が広くて曖昧であるのが現状です。他にも、防災食、災害食、保存食、行動食、備蓄食など、テレビやネットショップなどでは様々な言葉が散在しています。

広辞苑を調べてみると、「非常食」「保存食」については記載があります。

非常食とは「災害など非常時のために準備しておく食料」とされ、保存食とは「不時の災害などに備えて長期間保存できるように、乾燥したり缶詰にしたりした食品」と記載があります。

広辞苑では 2022 年1月現在、災害食、防災食、行動食、備蓄食の記載はありません。これら災害を連想する食料の名前を聞くと、「主に防災用に作られた、災害など非常時のために準備しておく、長期保存が可能な食料」というイメージが強いかと思います。いわゆるお店の防災コーナーに置いてある、水で戻すアルファ米、缶入りパン、缶詰、レトルト食品、カンパンなどが思い浮かぶでしょう。

ですが、災害時の食料についてはもっと広い視野で備える必要があります。

《「災害食」という言葉と定義》

そんな中、日本災害食学会において、「災害食」という言葉が定義されています。

「災害食」とは (日本災害食学会 日本災害食 認証基準より)
  1. 「いつものように食べることができない時の食のあり方」という意味で災害食を考え、避難所や自宅で被災生活をする高齢者や乳幼児、障害者や疾病患者など日常の社会においても特定の食事を必要とする人々、さらに救援活動に従事する人々など、被災地で生活、活動するすべての人々に必要な食をいう。
  2. 日常食の延長線上にあり、室温で保存できる食品及び飲料はすべて災害食となりうる。
  3. 加工食品(飲料を含む)及び災害時に限定された熱源、水により可能となる調理の工夫も含める。


つまり「災害食」とは、防災用に作られた食料のみを指すのではなく、日常食べる食料の延長線上にあり、常温保存がある程度長期間可能な食料は全て「災害食」と定義することができます。

《「災害食」を備えるための考え方「行動食」と「備蓄食」》

さて、そんな災害時に食べる(可能性のある)ほぼ全ての食料を意味する「災害食」ですが、漠然と選んで備えるのではなく、2 つに分けて考えると備えやすくなります。

それは、「行動食」「備蓄食」です(先述の通り、広辞苑には記載がありません)。

《「行動食」について》

災害発生直後から、安全な場所(被災生活を送れる状態の自宅、避難場所、避難所など)への緊急避難の際に、必要最低限のエネルギーを得るための食料です。期間としては 1〜3 日程度を想定します。緊急避難中に食べるため、開封してすぐ食べられるもの、もしくは水やお湯を入れるだけのものを備えるようにします。非常用持ち出し袋に入れ持ち運ぶことも想定されるため、軽くてかさばらず、高カロリーなものがおすすめです。

具体的には、水、バータイプの栄養機能食品(カロリーメイトなど)、ゼリー飲料、アルファ米や缶入りパンなど、主に防災用に作られている食料がこれに該当します。

《「備蓄食」について》

大規模災害発生後に物流が停止し、避難所や自宅で避難生活を送るための食料です。カロリーだけでなく、栄養バランスが重要となってきます。期間としては数日〜数週間程度を想定します。ただし、大規模の災害ではさらなる長期備蓄が必要となる可能性もあります。

アルファ米や缶入りパンなどの主に防災用の食料だけでなく、水、米、パスタ、シリアル、カップ麺、缶詰など日常で消費する様々な食料がこれに該当します。

《備えは日常生活の延長》

大まかではありますが、非常用持ち出し袋に入れておくのが「行動食」で、自宅で避難生活を送るために備えておくのが「備蓄食」であり、これらをまとめたものが「災害食」であると理解すると分かりやすいです。

行動食のイメージ ※あくまで一例
備蓄食のイメージ

結局のところ、この「災害食」の定義が示すように、災害時の食料については日常生活の延長で備えるべきものです。災害時、物流が止まることもしばしばあります。被災後の生活をどう乗り切るか、日々の生活で防災を意識し、ローリングストック法にて食料を備えるのが最も効率が良い備えです。