目次
《在宅避難のためには、食料や飲料水の備蓄が必要》
防災のはじめ方として、ハザードマップを見て自宅のリスクを理解した上で、災害時はなるべく在宅避難を心がける必要があります。その上で必要となるのが、食料や飲料水の備蓄です。今回は、食料・飲料水の備蓄の目安と、最も簡単で効率的な備蓄法「ローリングストック法」について解説します。
防災のはじめ方についてはこちら ↓
防災対策、何から始めるか?〜防災対策のはじめかた〜
《備蓄の目安は1週間》
災害が発生すると問題になるのが、電気、ガス、水道などライフラインの停止と食料不足です。物流も停止し、備蓄していない人々は買いだめに走り、スーパーやコンビニからは水・食料・日用品などが消えてなくなります。
ではどのくらい備蓄をしておけば良いか?ということになります。最低、3日分の備えをしましょうと聞いたことがあると思いますが、それでは不十分な場合があります。実際2011年の東日本大震災では、電気の復旧に1週間以上、水道の復旧に10日以上かかった地域もありました。
ライフライン停止は最低1週間を見込んでおくべきであり、政府も大規模災害時は1週間の備えを推奨しています。そのため最低 1 週間分の備えをしておく必要があります。ただ、これから備えようと準備を始める方はまずは3日分、徐々に1週間分と段階的に備えていくのもおすすめです。
《知っておきたい1週間分の備蓄量》
備蓄量の目安としては、農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド(平成31年3月)」で目安が示されています。
おとな 1 人当たり 1 週間分の量の目安は以下の通りです。
水(飲料水+調理用水) | 2Lペットボトル6本×2箱(1人あたり1日おおよそ3Lが目安) |
米 | 1kg |
乾麺(そうめん、パスタ、そば、うどん) | 2袋 |
カップ麺類 | 3個 |
パックごはん | 3個 |
レトルト食品 | 9個 |
パスタソース | 6個 |
お好みの缶詰 | 9個 |
その他、副菜など | 適宜 |
これらが備蓄例として示されています。
東京都が運営する「東京備蓄ナビ」では、ホームページ上で家族構成など簡単な情報を入力することで、無料で家庭における備蓄品目と必要品のリストをシュミレーションすることができます。一度シュミレーションしてみると良いでしょう。
合わせて備えておきたいのがカセットコンロとカセットボンベです。カセットコンロがあれば冷蔵庫の中のものが調理でき、それだけで数日の食料を得ることができます。またライフラインが停止していても温かいものが食べられるということは、非常に安心感をもたらしてくれます。カセットボンベの備蓄の目安は1人1週間あたり6本と言われています。
1週間分、これだけの量を備えると考えると、かなりハードルが高いと感じるかもしれません。これを日々の意識を少し変えるだけで、トータルでみて余分な出費なく簡単に備蓄できてしまう方法があります。それが「ローリングストック法」です。
《消費しながら備える「ローリングストック法」》
「ローリングストック」とは、「ストック(備蓄)」を「ローリング(回転)」するという組み合わせで、英語ではなく日本語です。「日常備蓄」や「循環備蓄」と言われることもあります。日本が経済大国となり始めて経験した大震災である、阪神淡路大震災がきっかけで注目されるようになったそうです。
普段から使う・消費する食材、加工品、日用品等を多めに買っておき、古いものから消費をし、消費したら消費した分だけ新しく買い足すことで、常に一定量を備蓄しておくという考え方です。
メリットとして以下のことがあげられます。
- 防災を意識するだけで気軽に始められる
- 賞味期限や使用期限を気にしないですむため管理が非常に楽である
- 日常生活の延長で常に備えることができる
- 災害時のシミュレーションになる
- 食べ慣れている食事を備蓄できる
- 初期の備蓄時のみ費用はかかるが、いずれ消費するものであるため総合的にみると無駄な出費がない
- コストパフォーマンスが良い(防災用の非常食は値段が高い)
デメリットとして、
- 保管場所(スペース)が必要になる、古いものから食べる必要がある
ということがありますが、現状最も簡単かつ確実な備蓄方法となります。
《ローリングストックにおすすめの食料》
ローリングストックに向いている食料としては、以下のものがあります。
- 常温保存可能なもの
- 賞味期限が1年程度あるもの
- すぐに食べられる、もしくは短い調理時間ですむもの
- 使い切りまたは開封してもしばらくもつもの
- 使用後にゴミが少ないもの
具体的には、水、米、パスタ、シリアル、カップ麺、ホットケーキミックス、缶詰(豆の水煮、鯖缶、コンビーフなど)、魚肉ソーセージ、野菜ジュース、干し野菜、乾物調味料、漬物、パスタソース、油、インスタント味噌汁、粉末スープなどがローリングストック向きです。
《究極の防災法であり、防災の心構えでもあるローリングストック》
ローリングストックは食料や水だけでなく、日用品などすべてのものに応用できます。乾電池、ティッシュ、ウェットティッシュ、トイレットペーパー、オムツや介護用品、ペット用品、洗剤、絆創膏やガーゼなど救急用品、生理用品、ラップ、ゴミ袋、不織布マスク、化粧品類、コンタクトレンズなど、普段使うものの在庫を切らさないようにするだけで、防災対策ができます。
車のガソリンも同じです。半分まで減ったら給油しておくことを心がけることで、いざという時でも最低半分の燃料を確保できていることになります。
このように、ローリングストックとは防災対策の方法の一つとしてだけでなく、日常に防災対策を取り入れる心構えでもあります。残念ながら日本は災害大国であり、日本に住んでいる以上、一生涯防災対策を続ける必要があります。日常と防災対策を切り離して考えると息切れして長続きしません。なるべく余分なお金をかけず、どれだけ日常生活の延長に防災対策を位置付けるかが長続きのポイントです。
お買い物の際には防災意識を高め、自分と家族を守るためにも、無理なく続けられるローリングストックをぜひ心掛けてみてください。