防災用ヘルメットの選び方 〜災害時に頭を守る定番の防災グッズ|耐用年数|子ども用ヘルメットと防災ずきんも紹介〜

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防災といえば、防災用ヘルメットを被って避難や復旧活動をしているイメージがあると思います。しかしみなさんは、実際に自宅にヘルメットを備えているでしょうか?

災害に備えようと思っても、普通のいわゆる工事用・作業用ヘルメットどう違うのか、どんな防災用ヘルメットを選べばいいのかがよく分かりませんよね。

ここでは、防災用ヘルメットは必要なのか?防災用ヘルメットとは何か?どう選べばよいのか?子どものヘルメットはどうすればよいのか?そしておすすめの防災ヘルメットについて紹介します。

【災害時に頭を守ることは非常に重要】

災害時、特に大地震が発生した時は、建物の倒壊や損傷、その後の余震による落下物や飛来物により頭部にケガを追う可能性があります。

頭部の外傷はすぐに命に直結する場合もありますし、それほど強い外傷でなくても時間を置いて致命的な経過を辿る場合もあります。我々医師も日々の診療において、神経の中枢である脳の損傷や出血には、非常に警戒感を持って患者さんをみています。

特に災害時は医療機関の機能がマヒするため、可能な限りケガのリスクを避ける必要があります。避難時だけでなく、片付けなど復旧活動の際にも頭部を保護できるヘルメットがあると非常に安心です。

在宅避難をする場合などでは、ヘルメットはほとんど出番がない可能性もあります。必ず使うかどうかは災害が起きてみないと分かりませんが、何が起こるかが分からないのもまた災害であり、備えておいた方が絶対よい防災グッズであると言えます。

防災用ヘルメットが活躍する場面
  • 地震による建物の倒壊・損傷、余震による落下物や飛来物から頭を保護する。
  • 災害時に避難する時。
  • 火山噴火による噴石の飛来から頭を保護する。
  • 台風など強風による飛来物から頭を保護する。
  • 瓦礫などの片付けや作業時に頭を保護する。

【防災用ヘルメットとは】

筆者が備えている折りたたみヘルメット「トーヨーセーフティー ブルーム2」

一般的に、保管場所を取らないように折りたたみ機能を持ち、コンパクトに収納できるヘルメットを「防災用ヘルメット」と呼ぶことが多く、様々な種類が販売されていますが、実際には「防災用ヘルメット」という規格はありません。いわゆる、工事用・作業用ヘルメットと明確な区別があるわけではなく、厚生労働省が定めている「保護帽の規格」に適合していれば、各業種や各作業現場で安全に使用できる「保護帽」として認定されます。

つまり、防災用ヘルメットも工事用・作業用ヘルメットも、規格の上では同じ「保護帽」ということになります。

一般社団法人 日本ヘルメット工業会では防災用ヘルメットを、「工場作業・現場作業等の労働安全衛生規則に関わる場所で使用するものではなく、また、その他の作業等においても使用しないヘルメットで、万が一の災害時の非常時のみに被る防災用として使用するヘルメット」と定義しています。

バイク用ヘルメットや自転車用ヘルメットは「保護帽」の規格とは異なります。防災用に備えるのであれば防災用ヘルメットを選ぶようにしましょう。ただし、災害時に防災用ヘルメットがない場合、バイク用や自転車用ヘルメットを代用して頭部を保護することは、何も被らないよりはるかにマシですので、有効な手段と言えます。

【防災用ヘルメットの選び方】

【国家検定合格品を選ぶ】

筆者が所有する防災用ヘルメットに貼られている、国家検定合格ラベル

厚生労働省告示第120号「保護帽の規格」に則った性能試験に合格したヘルメットは、型式検定合格証と検定番号が交付されます。国家検定合格品は十分な保護性能を持つヘルメットであり、本体の内側に「労・検」と書かれたラベルが貼られています

国家検定には「飛来・落下物用」の耐貫通性試験・衝撃吸収性試験、「墜落時保護用」の耐貫通性試験・衝撃吸収性試験、「電気用」の耐電圧性試験があります。防災用ヘルメットは基本的に「飛来・落下物用」のヘルメットです。種類によっては「飛来・落下物用」だけでなく「墜落時保護用」にも対応している製品があります。

防災用を含む作業用ヘルメットの国家検定規格の種類
  1. 飛来・落下物用 → 防災用ヘルメットに求められる基本規格
  2. 墜落時保護用 → 防災用ヘルメットでも規格を満たしている製品がある
  3. 電気用

※防災用ヘルメットの中には、墜落時保護用の規格を満たす製品もある。規格に合格した製品には「労・検」のラベルが貼られている。

特定の業種や作業現場では、この国家検定に合格したヘルメットを着用することが法律で義務付けられています。

一方で防災用としては、災害時に避難したり落下物などから頭を守るために必ずしもヘルメットを着用する義務はなく、着用するヘルメットも特に規格を満たしている必要はありません。しかし、安全安心な防災用ヘルメットの目安として、内側に「労・検」と書かれている国家検定合格品を選ぶのがおすすめです。

折りたたみ式の防災用ヘルメットでも、国家検定合格品であれば十分に頭部を保護する性能があります。

【素材で選ぶ】

ヘルメットにはABS製、PC製、FRP製、PE製の4種類があります。それぞれの特徴は以下のようになっています。

ヘルメットの素材の種類耐熱性耐候性耐電性耐薬品性耐用年数(使用開始から)備考
ABS製
(アクリロニトリルブタジエン・スチレン)
3年以内耐電性に優れるが、高熱環境には不向き
PC製
(ポリカーボネート)
3年以内耐候性はABSより優れるが、溶剤・薬品等には不向き
FRP製
(繊維強化プラスチック)
×5年以内耐候性・耐熱性には優れるが、リベット穴から通電するため電気用としては使用できない
PE製
(ポリエチレン)
×3年以内有機溶剤系の薬品を使用する環境に最適
ヘルメットの素材と特徴

防災用として販売されているヘルメットの多くは、ABS製かPE製になります。なお一部の防災用ヘルメットには、PE(ポリエチレン)と似た性質を持つPP(ポリプロピレン)が使われていることもあります。

特に、コンパクトに収納が可能な折りたたみ式の防災ヘルメットには、ABS, PE, PPが使われていることがほとんどで、帽体(ヘルメットのメインの部分)にFRP・PCが使われているものは存在していません

折りたたみ式ではない防災用ヘルメットをお探しで、素材にこだわるのであれば、火災の発生も想定し、耐熱性が最も高く、耐候性・耐薬品性にも優れるFRP製がおすすめです。FRP製は耐電性がないため、耐電性も求めるのならPC製がおすすめです。ただしFRP製・PC製は、ABS製・PE製と比較してやや高価となります。

耐用年数については後述しますが、使用開始からの耐用年数が最も長いのはFRP製です。しかし平時は保管しておく防災用ヘルメットについては、素材にかかわらず、使用開始からまたは保管を始めて6年での交換が推奨されているため、素材の耐用年数をそれほど重視する必要はないかもしれません。

【フィット感がよいものを選ぶ】

ヘルメットのフィット感は非常に重要です。しっかりとフィットするものでないと、頭部が安定しないため避難時に走りづらく、いざという時に頭部をしっかりと保護できません。ヘルメットのサイズは頭囲(cm)が目安となります。

あご紐が調節でき、後頭部から頭を押さえてくれるヘッドバンド付きのヘルメットがおすすめです。ヘッドバンドがあることで、頭部がしっかり固定されて密着度が高まります。

【簡単に組み立てられるものを選ぶ】

防災用ヘルメットは、いざという時に速やかに装着できるかが非常に重要です。折りたたみ式のヘルメットは、省スペースに保管できるため便利ですが、中には組み立てるのに手間取るヘルメットもあるため、組み立て易さについては購入前にしっかりと確認しておきましょう。最近では、ほぼワンタッチで組み立て可能な防災用折りたたみヘルメットが増えています。

【耐用年数に注意が必要】

防災用ヘルメットについては、使用開始してから、もしくは保管を始めて6年が経過した場合、プラスチック等の劣化により交換が推奨されています。ヘルメットに貼られたステッカーには製造時期が、付属の説明書には耐用期間について記載されていますので、購入したら確認しておくようにしましょう。

ちなみに、工事用・作業用ヘルメットの耐用年数には法的な規定はありません。一般社団法人 日本ヘルメット工業会では、使用開始年月からの年数により、保護帽交換を推奨しています。

耐用期間が過ぎたヘルメットは、見た目に変化がなくとも、素材の経年劣化により新しいものと比べると衝撃が加わったときに壊れやすくなってしまっています。一度も使用していなくても耐用年数を超えたものは交換しましょう。

耐用年数とは別に、ヘルメットに明らかな変形や損傷がある場合、いざという時に十分な保護性能を発揮できないため、速やかに交換するようにしましょう。また、一度でも大きな衝撃を受けたヘルメットは、外観に異常がなくても性能が低下しているため、必ず交換するようにしましょう。

【子ども用防災ヘルメットと防災ずきん】

子ども用防災ヘルメット

ヘルメットはサイズが合わずしっかり装着しないと十分に頭部を保護してくれません。子どもには子ども用防災ヘルメットを選ぶ必要があります。

サイズの目安は頭囲で記載されています。商品により差はありますが、子ども用とされる防災ヘルメットは、頭囲がおおむね47〜57cmの範囲に設定されています。

厚生労働省の平成22年の乳幼児身体発育調査によれば、1歳3〜4ヶ月児の平均頭囲が47.0cm3歳6ヶ月〜4歳未満50.1cm6歳児51.6cmです。個人差はありますが、おおむね1歳3ヶ月〜中学生くらいまでは子ども用ヘルメットを選ぶのがおすすめです。

防災ずきん

筆者宅の乳幼児用防災ずきん

頭囲が小さく子ども用ヘルメットを被れない乳幼児には、乳幼児用の防災ずきんを備えておく方法もあります。

防災ずきんは防炎タイプであれば、頭部保護と火災への対応が可能です。しかし製品によっては、防炎を謳っていても、しっかりと防炎機能を発揮できないものも存在します。

日本防炎協会の認定品であれば、燃えにくさと耐衝撃性についての審査基準をクリアした製品として安心して使用できます。認定品の防災頭巾には防炎製品ラベルが付いています。

筆者が所有する、乳幼児用防災ずきんの(公財)日本防炎協会認定品ラベル

防災ずきんは頭部保護の面ではヘルメットには敵わないため、子どもの成長に合わせて子ども用防災ヘルメットを備えるようにしましょう。

【おすすめの折りたたみ式防災用ヘルメット】

防災用ヘルメットを備えるなら、省スペースで保管できる折りたたみ式がおすすめです。ここでは、おすすめの折りたたみ式ヘルメットを紹介します。

おすすめの折りたたみ式ヘルメットを選定する条件
  • 国家検定合格品であること
  • 組み立てが簡単であること
  • 収納性が良いこと
  • サイズ調節が可能なこと

トーヨーセーフティー BLOOM Ⅱ

我が家でも備えているトーヨーセーフティーの「ブルームII」です。国家検定の飛来・落下物用で、素材はABS、PE、PP樹脂を使用しています。たためばスリムに保管でき、組み立てもワンタッチです。機能性、組み立てやすさ、デザイン性が気に入り、自宅に備えています。

トーヨーセーフティー BLOOM Ⅲ ムーボ

トーヨーセーフティーの「ブルームⅢ ムーボ」は、素材はABS製で、国家検定の飛来・落下物用だけでなく、墜落時保護用の規格にも合格しており、作業用としても使用することができます。コンパクトに保管でき、組み立ては天面帽体を持ち上げて回転させるだけと非常に簡単です。

DICプラスチック IZANO2 折りたたみヘルメット

DICプラスチック株式会社の「IZANO2(イザノツー)」 です。素材はABS製で、国家検定の飛来・落下物用だけでなく、墜落時保護用の規格にも合格しています。下から上に押し上げるだけで組み立てが完了するため、非常に簡単です。ヘッドバンドも備わっているためサイズ調節がしやすく、フィットしやすくなっています。

加賀産業株式会社 オサメット

加賀産業株式会社の「オサメット」は、素材はABS製で、国家検定の飛来・落下物用です。あご紐には調節が簡単な絞り式を採用しており、高いフィット感が得られる調節可能なヘッドバンドも付属しています。組み立ては親指で押しながら被るだけと、非常に素早く装着できる仕様になっています。

ミドリ安全 Flatmet 2

ミドリ安全の「フラットメット2」は、素材には主にPPとABSが使用され、サイドのロック部分はPC製となっています。国家検定の飛来・落下物用に合格しています。たためば3.3cmと非常に薄くなり、組み立てもワンタッチで非常に簡単です。

株式会社イエロー タタメットBCP

株式会社イエローの「タタメットBCP」は、素材にPPが使用されています。国家検定の飛来・落下物用に合格しています。バネ内蔵式レバー「TATAwing」により、力を使わず簡単に組み立てることができます。ヘッドバンドもがあるため、しっかりと装着することができます。あご紐の先端に、周囲に危険や自分の場所を知らせることができるホイッスルが付属しているのが特徴です。

《子ども用ヘルメット》 加賀産業株式会社 オサメットジュニア

加賀産業株式会社の子ども用ヘルメット「オサメットジュニア」は、国家検定の飛来・落下物用に合格し、頭囲50〜56cmに対応しています。素材はABSで、ワンタッチで組み立てが可能であり、ヘッドバンドも装着されています。

《子ども用ヘルメット》 ミドリ安全 Flatmet-kids

ミドリ安全の子ども用ヘルメット「フラットメット キッズ」は、国家検定の飛来・落下物用に合格し、頭囲47〜57cmに対応しています。素材はPP、PE、ABSを使用しています。ワンタッチで組み立てが可能であり、非常にコンパクトでA4クリアファイル対応のランドセルに入れることができます。

《子ども用ヘルメット》 株式会社イエロー タタメットズキン2

株式会社イエローの「タタメットズキン2」は、国家検定の飛来・落下物用に合格し、頭囲47〜62cmに対応しており、子どもから大人まで幅広い年齢で装着できます。素材はPPです。防炎ズキン付きのため、火の粉や熱から保護することもできます。あご紐の先端にホイッスルが付属し、反射ステッカー、備蓄用ハンドル、ネームホルダーも標準で付属しています。さらに別売の専用アタッチメントにより、学校の椅子や机に取り付けが可能になります。

同社からは、タタメットズキン2の機能とコストバランスをよりリーズナブルに見直した、「タタメットズキン3」という商品も展開されています。

《子ども用防災ずきん》クツワ株式会社 乳幼児用防炎ずきん

クツワ株式会社の防炎ずきん「乳幼児用防炎ずきん」です。(公財)日本防炎協会認定品であり、0歳から使用できます。子供用ヘルメットが装着できない乳幼児用としておすすめです。

【1人1つずつ防災用ヘルメットを備えましょう】

防災用ヘルメットは1人1人が用意しておくべきものです。自分と家族の命を守るためにも、それぞれに合ったヘルメットを選ぶようにしましょう。