オートミールの防災備蓄 〜健康だけでなく防災にもメリットあり〜

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《話題のオートミールを取り入れてみた》

近年健康に良いと話題のオートミールを導入してみました。職場のスタッフ数名がオートミールを取り入れているのに感化され、最近体重が気になる自分にせめてもの健康対策としてオートミールを試してみました。

試してみると意外と食べやすく、これはアリだ!と気づき、防災備蓄にはどうかを検証してみました。

《オートミールとは》

オートミールとは、オーツ麦を脱穀して加工したもので、「oats(オーツ麦)」と「meal(食事)」を掛け合わせて「オートミール」と呼ばれています。オートミールに砂糖、蜂蜜、メープルシロップなどで甘みをつけ、食物油を混ぜてオーブンで焼いたものが、近年人気の「グラノーラ」です。

オートミールは栄養価が高く、カロリーも低いため、ダイエットや健康によいとされています。

オーツ麦をモミガラを取り除いた状態に加工したものを「オートグローツ」と呼び、その後食べやすいように各種オートミールに加工されます。加工されたオートミールには「スティールカットオーツ」「ロールドオーツ」「クイックオーツ」「インスタントオーツ」の4種類があります。

スティールカットオーツ

スティールカットオーツは脱穀したオーツ麦(オートグローツ)を粗く割っただけのもので、炊いたり煮たりする必要があり、日本の一般的なスーパーにはあまり出回っていません。

ロールドオーツ

ロールドオーツは脱穀したオーツ麦を蒸し、平たく伸ばして乾燥させたものです。加熱され薄く加工されているので、調理時間を短縮できるオートミールとなっています。粒が大きめのため噛みごたえがあり、咀嚼回数を増やして満腹感が得られやすいメリットがあります。反面、粒が大きいため加熱時間は2〜3分と若干長めになっています。

クイックオーツ

クイックオーツはロールドオーツを細かく砕いたものです。細かくすることにより、熱や水が内部にまで浸透しやすいため、短時間(1〜2分)で調理ができる手軽さが特徴です。基本的に水分量の多い調理に向いており、お粥のようなドロドロとしたり、ねっとりした食感になります。

インスタントオーツ

インスタントオーツはロールドオーツを一度加熱し、乾燥させたものです。粒が細かく、熱湯、ホットミルク、スープなどに入れるだけで食べることができます。一度調理しているため、オートミールの中で最も短時間で調理ができます。種類によってはあらかじめ味付けがしてあるものもあります。

《オートミールの栄養素》

オートミールは白米と比較し、タンパク質が約2倍多く含まれており、他の穀物と比較し、鉄・ビタミンなど栄養素が豊富に含まれています。また食物繊維は白米の約20倍多く含まれており、コレステロールの低下作用のある水溶性食物繊維と、便通や整腸作用のある不溶性食物繊維の両方をバランスよく含んでいます。

オートミール(100g)白米(100g)玄米(100g)
エネルギー380kcal358kcal353kcal
たんぱく質13.7g6.1g6.8g
脂質5.7g0.9g2.7g
炭水化物(単糖当量)63.1g83.1g78.4g
水溶性食物繊維3.2g微量0.7g
不溶性食物繊維6.2g0.5g2.3g
カルシウム47mg5mg9mg
鉄分3.9mg0.8mg2.1mg
100gあたりの成分表(文部科学省 日本食品標準成分表2020年版より作成)

この表をみると、「あれ?たんぱく質や栄養素はオートミールが1番多いけど、エネルギーも多いぞ?」と気づかれると思います。しかし、この表はそれぞれ100gあたりの成分表であり、1食あたりの成分表とは異なります。

実は白米と玄米は1食あたり150gであるのに対し、オートミールは1食あたり30gと少量となっています。これはオートミールは調理をすると2〜3倍に膨れるためです。また豊富に含まれている食物繊維は消化管で消化・吸収されないため、胃内での滞留時間が長く、満腹感を得やすくなっています。

オートミール(30g)炊いた白米(150g)炊いた玄米(150g)
エネルギー114kcal252kcal248kcal
たんぱく質4.1g3.8g4.2g
脂質1.7g0.45g1.5g
炭水化物(単糖当量)18.9g57.2g52.7g
水溶性食物繊維0.96g0g0.3g
不溶性食物繊維1.86g0.45g1.8g
カルシウム14.1mg4.5mg10.5mg
鉄分1.2mg0.15mg0.9mg
1食あたりの成分表(文部科学省 日本食品標準成分表2020年版より作成)

この表を見てみると、オートミールは1食あたりエネルギー量が少ないのに対し、食物繊維や栄養素は多いことが分かります。

《オートミールは食後血糖を穏やかに上昇させる低GI食品》

オートミールは低GI食品です。GI値とは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後血糖値の上昇の程度を示す指標です。GI値が高い食材を食べると血糖値が急上昇し、GI値が低い食材を食べると血糖値は緩やかに上昇します。

血糖値が急激に上昇すると、膵臓から血糖値を下げる「インスリン」というホルモンがより多く分泌されます。「インスリン」は血糖値を下げる働きの他に、脂肪を作り、脂肪の分解を抑制する働きがあります。つまり高GI食品を摂取すると、糖尿病だけでなく肥満の原因にもなります

食後の血糖値を急激に上げないことで、インスリンを過剰に分泌させないことが重要であり、肥満やメタボリックシンドロームの予防・改善にオートミールのような低GI食品が注目されています。

《朝食の白米の代わりとして取り入れたら時短効果もあった》

私は元々、朝食に冷凍してある白米をレンジで温め、味噌汁とご飯のお供と一緒に食べるのが習慣でした。その白米をオートミールに代用し、生活に取り入れてみました。お茶漬けの素を使ってお茶漬けにするのもおすすめです。

オートミールを白米のように食べるには、茶碗にオートミールと水を入れて1分半程度レンジで温めれば完成します。意外であったのは、冷凍の白米をレンジで温めるより短時間で済むため時短効果もあることでした。

肝心の味に関しては、麦っぽい風味があるものの、ほぼ無味で全く問題ありませんでした。時々「オートミールはまずい」という話を聞きますが、メーカーや種類を変えれば意外と許容できることが多いそうです。自分に合ったオートミールを見つけることが、長く続けるために重要です。

《オートミールは防災備蓄向きといえる》

オートミールを取り入れる生活が自分にあっていると分かり、防災的にはどうだろう?と考えるようになりました。防災を意識すると、オートミールのさらなるメリットが見えてきます。

長期保存が可能

筆者が備蓄しているオートミール。ローリングストックしながら色々な種類を試している。

オートミールは常温で賞味期限は約1年と長期保存が可能で、ローリングストック向きと言えます。白米の場合、生鮮食品であるため賞味期限が記載されていないことがありますが、ビニール袋や紙袋に入っているもので、未開封でも2週間〜2ヶ月程度(季節による)が賞味期限とされており、真空パックでは未開封で1年程度が賞味期限となっています。

同じ穀物でもオートミールは賞味期限が長めであり、特に防災向きと言えます。

簡単・最強の備蓄法「ローリングストック」 〜防災を日常生活に取り入れる心構えとしても〜

調理が簡単

オートミールは他のシリアルと違いそのまま食べるのには向きませんが、調理が簡単です。白米のように炊く必要がなく、水やお湯に浸せば食べることができます。水やお湯に浸しただけのオートミールをそのまま食べるのは、味や食感が苦手と感じる方も多いですが、簡単な調理で非常に食べやすくなります。災害時にはカセットコンロとアイラップのような耐熱ポリ袋を利用し、フリーズドライのスープなどとあわせて湯煎調理をすれば、リゾットのように食べることもできます。

その他、普段使いにも非常に便利で、白米代わりだけでなく、和・洋・スイーツまで広くアレンジすることができ、調理の範囲が広いのも特徴です。

小麦アレルギーでも食べることができる

オートミールは小麦アレルギーでも食べられる

オートミールは「オーツ麦」ですが、小麦とは異なる麦の品種のため、基本的に小麦アレルギーの原因物質は含まれず、小麦アレルギーでも食べることができます。災害時にアレルギーを気にしなくていいのは利点といえます。

しかし原材料の輸送、貯蔵、製造の過程で、ごく少量の小麦がまれに混入する可能性があり、重度の小麦アレルギーを持っている方は注意が必要です。

離乳食にも使うことができる

乳児がいる家庭では、オートミールをお粥にして離乳食とすることもできます。オートミールは鉄分など栄養素の含有量が多く、欧米では昔からベビーフードとして利用されています

大人から赤ちゃんまで幅広く食べられる、防災向きの食材といえます。

白米や食パンと比較してコストパフォーマンスも良い

銘柄や地域によって値段は変わってきますが、「総務省 小売物価統計調査」やインターネット上の情報を参照すると、1食あたり白米(150g)で約¥30〜¥60食パン(6枚切りを2枚分)で約¥50〜¥60オートミール(30g)で約¥30〜¥40となっています。グラムあたりの値段はオートミールの方が高くなっていますが、1食あたりは白米や食パンと同等かむしろ安く、オートミールはコストパフォーマンスが良いと言えます。

《無理に備えるのではなく、日常生活に合わせた防災備蓄が重要》

オートミールは若干のクセがあり、何となく備蓄していたけど、災害時に食べようと思ったら口に合わなかった、という可能性もあります。普段から食べ慣れておく必要があります。

無理に備えるのではなく、普段の生活の一部に防災を取り込むということが非常に重要であり、長く続けるコツと言えます。

オートミールが気になっている方、すでに始めている方、最近健康管理が気になる方は、防災備蓄の一つの形としてオートミールを日常生活に取り入れてみるのはいかがでしょう。

《おすすめのオートミール》

日食 プレミアムピュアトラディショナルオートミール

日本食品製造のロールドオーツタイプのオートミールです。1食あたり約¥30弱とコストパフォーマンスがよく、国内製造でより安心なオートミールとなっています。クセが少なく食べやすいのが特徴です。

日食 プレミアムピュアオートミール

日本食品製造のインスタントオーツタイプのオートミールです。1食あたり約¥40とコストパフォーマンスがよく、国内製造でより安心なオートミールとなっています。クセが少なく食べやすいのが特徴です。

クエーカー オールドファッション オートミール

クエーカーはアメリカでシェアNo. 1のオートミールです。ロールドオーツタイプで、1食あたり約¥30とコストパフォーマンスがよく、毎日消費するような方におすすめです。食感がしっかりして食べ応えがあります。やや麦の香りが強めのため好みが分かれるかもしれません。

クエーカー インスタントオートミール オリジナル

クエーカーのインスタントオーツタイプのオートミールです。ロールドオーツタイプのオールドファッションより短時間で調理ができ、さっと作って食べたい時などに便利です。