災害時のスマートフォンの活用 〜知っておきたい通信状況や設定について〜

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《スマートフォンの保有率は高く、災害時は情報収集に重要な役割を果たす》

NTTドコモ モバイル社会研究所の調べによると、2022年1月の調査では日本国内でスマートフォン(以下、スマホ)、携帯電話の所有者のうち、スマートフォン比率は94.0%であり、年々比率が上昇しています。今や日本人のほとんどがスマホを所有しています。

スマホは災害時に様々な情報を収集したり、家族の安否確認を行なったりする非常に重要なツールになります。多くの方が、災害時の通信回線(キャリア回線)の状況を知っておき、スマホの設定を見直したり、防災系アプリを入れておくことにより、いざ災害が発生しても速やかに情報を得ることができ、また共有することで減災に繋ぐことができます。

《災害発生時の通信回線の状況》

回線が集中し、繋がりにくくなる「輻輳」

大規模な災害が発生すると、安否確認のための電話により通信が集中する「輻輳(ふくそう)」が発生し、通信速度が遅くなったり、回線がダウンすることにより繋がりにくくなります。大規模な災害発生直後は、輻輳の原因となる通話での連絡はなるべく控えるようにします。また地震の揺れなどにより、通信回線の基地局や通信用機器そのものが損壊して通信が困難となる場合もあります。

停電が発生した場合

停電が発生した場合、通信キャリア回線の基地局は、バッテリーで数時間〜最大24時間程度稼働します。中には発電機を備えている基地局もあり、自家発電で稼働することもあります。そのため、停電時でも基地局や通信用機器自体に損壊がなければ、通信回線が維持され、スマホで情報収集や安否連絡ができる可能性があります。

Wi-Fiに繋がれば情報収集できる可能性が上がる

通信回線が繋がらない場合でも、Wi-Fiに接続することができれば、インターネット回線に繋ぐことができます。インターネットによる通信ができるため、Wi-Fi経由で通話が可能であったり、アプリで情報を得ることができます。災害時に通信回線がダウンしていた場合、街中のフリーWi-Fiスポットや、近くの繋がるWi-Fiへ接続を試してみましょう。

災害時に開設される公衆Wi-Fi「00000JAPAN」

引用:無線LANビジネス推進協会 紹介パンフレット

大規模災害が起こったときには、通信キャリアに頼らず情報収集や安否確認ができるように、被災地域でドコモ、au、ソフトバンクが垣根をこえて無料開放する公衆無線LANサービス(公衆Wi-Fi)があります。「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」というサービスで、誰もがパスワードなどを必要とせずWi-Fiに接続することができます

「00000JAPAN」は、2011年の東日本大震災を教訓に、災害時に公衆無線LANを無料で開放する活動が推進されて制定されました。2016年の熊本地震で初めて提供されています。

ただし注意点として、「00000JAPAN」は暗号化やユーザー認証がなく、セキュリティが低いことが挙げられます。そのため、悪意ある第三者が設置したなりすましWi-Fiや、パスワードやクレジットカード情報の漏洩などには注意する必要があります。

《災害発生時、まずはスマホを省電力モードに切り替える》

Dr. ソナエル
Dr. ソナエル

「スマートフォン 電池切れれば ただの鉄」です

液晶画面を暗くし、省電力モードへ

当たり前ですが、スマホは電池が切れれば使うことはできません。災害時はスマホのバッテリーを長持ちさせる必要があります。災害発生時はまず液晶画面の明るさを落とし、消費電力を下げましょう。これが節電に最も効果的と言われています。また、iPhoneでもAndroidでも、ほとんどのスマホには省電力モードが搭載されており、災害発生時は省電力モードに切り替えます。いざという時のために、省電力モードの設定方法を普段から確認しておきましょう。

「機内モード」の設定には注意が必要

電波状態が悪い場所では、スマホは電波を探すためにより多くの電池を消費してしまいます。通信環境が悪い場合、「機内モード」などで一時的に通信機能をオフにすると電池の消費を抑えられます。ただし、緊急地震速報など緊急情報を得ることもできなくなることは注意が必要です。

Wi-Fiや防災系アプリのGPSは適宜オンに

位置情報サービス(GPS)の設定をオフにすることも節電効果がありますが、防災系アプリの場合、GPS情報から緊急速報や警報を発報する場合があるため、必要なアプリのGPSは適宜オンにしておきましょう。また、Wi-Fiをオフにすることも多少の節電効果がありますが、通信回線が集中する「輻輳(ふくそう)」により繋がりにくくなっている場合でも、Wi-Fiが繋がればアプリによって情報が得られたり連絡がとれることがあります。Wi-Fiはオンにしておくか、オフにしても時々オンにして確認すると良いでしょう。

バッテリー切れに備える

乾電池式モバイルバッテリーもおすすめ

外出先でのバッテリー切れを可能な限り予防するためには、普段から外出前はスマホを充電するようにし、万が一外出先で充電が切れても困らないように、モバイルバッテリーを普段から持ち歩くと安心です。普段、充電式モバイルバッテリーを使わない(持ち歩かない)場合は、乾電池式モバイルバッテリーをカバンに入れておくのがおすすめです。

《スマホに入れておきたい防災系アプリとは》

そもそもスマホには緊急速報(緊急地震速報、津波警報、Jアラートなど)を受信する機能が備わっています。まずはこれらの通知をオンにすることを忘れないようにしましょう。

「防災系アプリ」とは、地震や津波が発生した時に緊急避難情報を通知してくれたり、台風や洪水情報などを分かりやすく知ることができたり、安否確認できるものなど、様々な防災に役立つ機能を持ったアプリです。災害専用という訳ではなく、例えば天気予報アプリやSNSアプリのように、普段使いもできるフェーズフリーなアプリも広い意味で防災系アプリに含まれます。

防災向けのアプリはほとんどが無料で十分な機能が使えます。災害を想定し、日頃からスマホに防災系アプリを入れておくのがおすすめです。