防災用の非常食が目まぐるしく進化していく中、今も昔も「防災といえばカンパン」というイメージはいまだに根強く残っています。実際、カンパンは古くから支持されている非常食です。
様々な非常食を物色していると、一周回ってカンパンという原点に回帰したくなります。改めてカンパンの魅力や、防災的なポイント、飽きないためのレシピを探ってみます。
目次
【カンパンとは】
カンパンとは、原材料の小麦粉を発酵させ、保存・携帯のために固く焼き固めたビスケットの一種です。
天保13年(1842年)、伊豆韮山の代官、江川太郎左衛門担庵公が非常時に備え、保存できる軍用の携帯食としてパンを焼き始めたのが、カンパンの始祖だそうです。その後、戦争で軍糧食として改良を重ね、現在のカンパンに至ります。
【カンパンのメリット】
カンパンは5年の長期保存が可能で、他の非常食と比べて安価なのがメリットです。開けてそのまま食べられ、腹持ちもよく、でんぷんのアルファ化度が高いため、消化・吸収も良好です。
さりげなく氷砂糖も入っており、一緒に食べることで口内の唾液の分泌が促され、水なしでも食べやすくなります。
カンパン1粒あたり約10kcalであるため、カロリー摂取の計算も簡単です。
【カンパンはもはや時代遅れと揶揄されることも】
しかしカンパンは、味が単調、飽きる、アゴが疲れる、唾液を持っていかれる、のどが渇くため水が貴重な災害時には向かない、という意見があります。
確かに、災害時に「カンパンだけで1週間過ごしなさい」と言われたら、かなり厳しいでしょう。
また原材料が小麦粉であり、ほぼ炭水化物であるため、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの絶対量が不足しています(カルシウムはある程度含有されている)。
防災対策として、とりあえずカンパンを備えているから大丈夫……ということにはならないので、注意が必要です。
【飽きがこないようにアレンジレシピ】
そのまま食べても美味しいカンパンですが、災害時にカンパンだけを食べて過ごすはかなり厳しいのが現実です。
しかしカンパンは、言ってみれば「固いパン」ですので、他の食材と組み合わせることで、とても実用的な非常食として活用できます。色々な組み合わせを試してみたので、ご紹介します。
カレーと一緒に
防災用にレトルトカレーを備蓄している方は、少なからずいると思いますが、カレーとカンパンの相性は良く、違和感なく美味しく食べられます。
スープや野菜ジュースと一緒に
スープや野菜ジュースと組み合わせて食べるのもおすすめです。カンパンが水分を含んで柔らかくなり、とても食べやすくなります。
生ハムやチーズを乗せてカナッペに
一口大に切った食パン、フランスパン、クラッカーなどに、生ハムやチーズなどを乗せた軽食を「カナッペ」と言います。災害時に停電が発生し、冷蔵庫内の食材が痛む前に消費しなければならない時などに活用できそうです。
アヒージョに添えるバケット代わりに
アヒージョに限らず、非常食の定番である缶詰には様々な種類があります。カンパンをパン代わりにすることで、缶詰の汁まで無駄にせず摂取できるため、食料が貴重な災害時には嬉しいポイントです。
トマトソース、マヨネーズ、ホワイトソースにつけて
試しにトマトケチャップにつけてみましたが、中途半端に甘みがあり不評でした。ですが、トマトソース、マヨネーズ、ホワイトソースであれば、とても相性が良さそうです。
災害時にレトルトのパスタソースなどを使う場合、残ったソースを無駄にしないために役立ちそうです。
あずき、ようかん、ジャムを乗せて簡易スイーツに
あずき、ようかん、ジャムなどを乗せることにより、災害時に嬉しいスイーツに早変わりします。行動食として、持ち歩きにも便利なようかんを乗せて試したみたところ、とても相性の良い美味しいスイーツになりました。ようかんは薄切りの方が良いかもしれません。
災害時のスイーツは、心の安らぎを得ることができます。
チョコペンとコラボで簡易スイーツに
スイーツ作りに便利なチョコペン(湯煎不要の固まらないタイプ)を使うことで、簡易スイーツが出来上がります。カンパンにお絵かきもできて、子どもも楽しめるのがメリットです。我が家ではこれが最も子どもに高評価でした。
チョコペン(湯煎不要の固まらないタイプ)自体も、災害時のエネルギー源、スイーツとなり、持ち運びもしやすいため、とても防災備蓄向きと言えます。
牛乳に浸して離乳食に
乳児がいる家庭では、牛乳などに浸して柔らかくすることで、離乳食としても活用できます。
【古くてもやっぱり、防災といえばカンパン】
時代遅れの非常食とも言われるカンパンですが、このように色々とアレンジすることにより、非常に優秀な食料となります。
カンパンは主に炭水化物ですので、ご飯と同じ主食になり得ます。他の主菜や副菜と組み合わせることで十分有効な非常食として機能します。
ぜひ防災備蓄のひとつとして、今一度カンパンを見直してみてはいかがでしょう。