目次
《防災士資格を取得しました》
この度、NPO法人 日本防災士機構認定 防災士の資格を取得しました。
自称「防災マニア」の内科医として、日々防災対策に勤しんでいるわけですが、防災の知識を自己流で得ていく中で、やはり一度系統的に勉強したいと思うようになり、申し込みをしました。
《防災士とは?》
防災士とは”自助” “共助” “協働”を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、 そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した人です。 (NPO法人 日本防災士機構より)
防災士は、NPO法人 日本防災士機構が認証する民間資格です。国家資格ではありません。
防災士誕生のきっかけとなったのは、1995年に発生した阪神・淡路大震災でした。
阪神・淡路大震災は、戦後高度に集積した近代都市を襲った初めての大地震であり、この震災では「大規模災害の場合は行政機関も被災するため、その対応には限界がある」という教訓を残しました。この教訓を元に、民間自律の発想と、民間の防災リーダーを可及的速やかに養成し、民間の力による地域防災力の向上に貢献する目的で、2003年(平成15年)に日本防災士機構が創設されました。
2022年04月末日の時点で、230,842名の防災士が認証されています。
《防災士資格を取得するには》
防災士資格に年齢制限は設けられておらず、誰でも挑戦することができます。しかし研修内容、試験があること、救急救命講習があること、防災士に期待される一般的な社会的役割等を考えると、中学生以上が望ましいとされています。
警察官、消防吏員、消防団員、赤十字救急法救急員資格認定者に対しては特例による資格取得制度がありますが、私を含め多くの方は一般的な方法で取得します。
- 防災士研修講座の受講(履修確認レポートの提出+会場研修2日間)
- 防災士資格取得試験に合格する
- 救急救命講習の受講
上記を満たした上で、申請に必要な書類の提出が必要となります。
①防災士研修講座の受講(履修確認レポートの提出+会場研修2日間)
防災士資格を取得するには、日本防災士機構が認証した防災士養成研修実施機関(民間、自治体、学校法人など)が実施する研修講座を受講する必要があります。
「防災士研修センター」では、2日間の会場研修と資格取得試験をまとめて受講することができ、資格の認証登録申請も代行してくれます。
会場研修の3〜4週間前に機構が定めたカリキュラムである「防災士教本」が送られてきます。防災士教本による自宅学習を行い、教本の内容が穴埋め式になっている「履修確認レポート」を作成します。また、「試験対策ブック」も同封されており、併せて自宅学習を行います。
私の場合、仕事の合間や帰宅後に学習を行いましたが、教本の内容にそれなりのボリュームがあるため(索引を含めて370ページ)、間に合わないかも…?と思うこともありました。時間に余裕を持って学習することをお勧めします。
次に、2日間の会場研修である「防災士養成研修講座」を受講し、「研修履修証明」を取得します。
②防災士資格取得試験に合格する
その後「防災士資格取得試験」を受験します。出題範囲は防災士教本の内容から3択式で30問出題され、80%以上(24問以上)正解で合格となります。試験時間は50分ですが、十分余裕があります。
試験対策は、送られてくる「試験対策ブック」を中心に学習を行いますが、実際に試験を受けてみるとそれのみでは若干足りない印象を受けました。防災士教本もある程度読み込んでおく必要があります。とはいえ、2021年度の合格率の集計は91%と公表されており、それなりに準備をしておけばほぼ受かる試験と言えます。
ちなみに私の勉強法としては、
- 防災士教本を読み進めながら、履修確認レポートを埋めていく。
- 教本は時間の関係もあり、1周だけ読み込んだ。
- 試験対策ブックを会場研修の日までに2周、会場研修の昼休みを利用して間違えた問題だけをもう2周。
これで無事合格することができました。試験結果は、受験後約2週間以内に郵送で届きます。
③救急救命講習の受講
合格後(5年以内)または事前に、全国の自治体、地域消防署、日本赤十字社等の公的機関、またはそれに準ずる団体が主催する「救急救命講習」を受け、修了証を取得する必要があります。「救急救命講習」は医師、救急救命士、消防吏員ではその資格証の写しを提出すれば改めて受ける必要はありません。
私の場合は医師免許を持っているため、改めて講習を受ける必要はなく、研修会場で他の必要書類と合わせて医師免許のコピーを提出しました。
防災士研修センターが開催する、東京や大阪会場のコースでは救命救急講座もセットになっているため、わざわざ消防署などに行かなくても2日間の会場研修で救急救命講習を受講できます。ただしこのコースでは全員必修となるため、すでに資格を持っている場合でも受講が必須となります。
防災士になるための費用
防災士研修センターでは研修講座を定期的に開催しており、私は防災士研修センターのホームページから申し込みを行いました。救命講習付きのセミナーもあるため、まとめて取得しやすいのがメリットです。
防災士研修講座受講料(49,000円)、消費税(4,900円)、防災士資格試験受験料の預り金(3,000円)、防災士資格認証登録料の預り金(5,000円)で、計61,900円(2022 年5月時点)となっており、それなりに費用がかさみます。しかし自治体の中には助成制度を設けているところもあるため、一度確認してみるとよいでしょう。
《防災士にできることや期待される役割》
晴れて防災士資格を得たら何が出来るか?が気になるところですが、特定の権利や権限を得たり、逆に義務的な行動が求められることはありません。
防災士は国家資格ではなくあくまで民間資格であり、就職活動に有利になるわけではありません。また資格を得てすぐに防災のプロになれる訳ではありません。
平常時から災害時まで防災士に期待される役割
平常時においては、まず自らの防災を見直し、自宅の耐震対策や備えを行い、それを知人や親戚に広めていくとともに、職場や地域の人たちの防災意識の向上に努め、地域の防災活動への積極的な参加をすることが期待されています。
災害時においては、自分が被災した場合は自らの身を守り、避難誘導、初期消火、救出救助活動等に当たります。自分が被災していない場合は、被災地支援として避難や復旧・復興に係るボランティア活動、物資の調達・運搬等各種の支援活動に参加するなど、様々な役割が期待されています。
防災士の基本理念としては、NPO法人 日本防災士機構では次のように述べられています。
「自助」 自分の命は自分で守る。
自分の安全は自分で守るのが防災の基本です。災害時に命を失ったり、大けがをしてしまったら家族や隣人を助けたり、防災士としての活動をすることもできません。まず、自分の身を守るために日頃から身の回りの備えを行い、防災・減災に関する知識と技能を習得し、絶えずスキルアップに努めます。
「共助」 地域・職場で助け合い、被害拡大を防ぐ。
災害の規模が大きければ大きいほど、消防、警察などの公的な救援活動が十分に機能するまでには一定の時間がかかります。そこで発災直後における初期消火、避難誘導、避難所開設などを住民自身の手で行うために、地域や職場の人たちと協力して、災害への備えや防災訓練を進めます。防災士は、そのための声かけ役となり、リーダーシップを発揮します。
「協働」 市民、企業、自治体、防災機関等が協力して活動する。
日頃から、行政をはじめ防災・減災に関わる多様な機関、団体、NPOなどと密接に連携し、防災訓練等の活動を通じて、お互いに顔の見える関係をつくり上げ、「災害に強いまちづくり」をすすめます。また、大規模災害が発生した際には、それぞれが可能な範囲で被災地救援・支援活動に取り組みます。
《防災士資格を持つ意義》
防災士資格には有効期限や更新はないため、一度取得すれば生涯防災士として認定されます。難易度はそれほど高くはない資格ですが、確かに費用を考えると気軽に申し込めるものではありません。
特定の権利や権限を得るわけでもなく、就職に有利になるわけでもない資格ですが、災害大国日本に住んでいる以上、私達は生涯防災を続ける必要があります。
多くの自治体で予算を計上して防災士を養成し、自主防災組織や学校、職場に配置するなどの事例があり、防災士の社会的評価と期待は急速に高まっています。実際の災害時には、多くの防災士が活躍している実績もあります。自分や家族を守り、その上で地域に貢献できる防災士資格は、ライフワークそのものに関わるものであり、決して無駄にはならない資格です。
さらに防災士になった暁には、資格を取得してそれで満足して終わるのではなく、日々知識やスキルを更新し、来るべき災害に備えることが非常に重要です。