長い人類史の中で古来の灯りとして使用され、地震や停電における防災グッズの定番と言えば、ろうそくです。個人的には、普段使いもしやすいキャンドルを備えるようにしています。
停電時の明かりとして定番のろうそく・キャンドルですが、実は災害時、特に大地震では、ろうそくにより火災のリスクがあるため、使うべきではないという意見が主流です。確かに、まずは安全性の高いLEDのランタンや懐中電灯と電池をしっかりと備蓄することが重要です。
その上で、災害時のおけるろうそく・キャンドルのメリットや、使用する場合の注意点などを紹介します。
目次
【災害時、特に大地震ではろうそく・キャンドルは火災のリスクあり】
平時でもろうそく・キャンドルにより、毎年一定数の火災が発生しています。
災害時の場合、特に大地震発生後はその後も余震活動の危険性が高く、ろうそくやキャンドルが倒れやすい状況であり、地震の揺れによりものが散乱し、引火・延焼しやすい状況です。災害による疲れやストレスにより、火の扱いに対して注意緩慢にもなります。
また、火災が発生したら通常時より避難がし辛いこと、ガス漏れが発生している場合は爆発の危険があること、災害により消防の機能が追いつかないことから、災害時にろうそく・キャンドルの使用は非常に危険とされています。
2011年に発生した東日本大震災では、発生した停電や計画停電において明かりとしてろうそくを使用し、それが原因で火災が多数発生しています。
総務省消防庁は、2018年9月の北海道胆振東部地震の際、直近に発生した台風21号後により関西の停電地域ではろうそくが原因とみられる火災が少なくとも3件あったことを提示し、極力ろうそくなどの裸火は使用しないようにTwitterで呼びかけています。
なのですが、総務省消防庁ホームページの防災ページを含め、政府関係機関の防災情報ページでは、ろうそくが非常用持ち出し袋に必要と記載がある点については、矛盾を感じるポイントでもあります。
【ろうそく・キャンドルのメリット】
災害時におけるろうそく・キャンドルの使用には火災のリスクがありますが、そもそも古来の灯りであるろうそくは、長い人類史の中で、人々に光を与えて続けてくれました。ろうそくは古代エジプト時代から使われており、日本では奈良時代に最初に登場しました。
長い歴史の中で使われ続けているろうそくは、明かりとしてはもちろん、現代においても礼拝や追悼など様々な場面で使われており、人々の生活に寄り添ってきました。それはろうそくに、様々なメリットもあることを意味します。
- スーパー、100円ショップ、雑貨屋など、どこでも手に入りやすい。
- 一定の明るさが長時間(キャンドル1個で4〜5時間)得られる。
- 単価が安い。
- 保管にそれほど場所を取らない。
- 長期保存が可能で、劣化がほとんどない(アロマキャンドルは長期保管で香りが抜ける可能性あり)。
- ろうそく・キャンドルの炎には、心理的なやすらぎ効果がある。
- アロマキャンドルであれば、アロマによる癒し効果が期待できる。
使用にあたっては火災に注意が必要ですが、我が家では災害時の長期停電の可能性を見込んで、LEDランタン・ライトとは別に、日常使いしやすいキャンドルを備蓄するようにしています。また中には、防災用として12〜24時間点灯するキャンドルなども市販されています。
【ろうそくの明るさは?】
光の明るさを表す値として、「カンデラ(cd)」や「ルーメン(lm)」があります。カンデラは「光度」を表す単位であり、ルーメンは「光束」を表す単位です。どちらも値が大きい方がより明るいことを意味します。
光の明るさの単位やLEDライトについてはこちら ↓
LEDライト(懐中電灯)の選び方 〜防災に「明かり」の備えを!ハンディ型・ヘッドライト型・ランタン型・コンパクト型どれを選ぶか、明るさの目安や防災的観点から意識するポイントも!〜一般的なろうそく1本の明るさがほぼ1カンデラとなります。LEDライトやランタンの明るさはルーメン(lm)で表されることが多いため、ろうそく1本あたりのルーメン値が気になるところです。
ルーメンは光の明るさの束(たば)を表す単位であり、「全ての方向に対して1カンデラの光度を持つ標準の点光源が、1ステラジアンの立体角内に放出する光束」と定義されます。
細かい換算式は省略しますが、ろうそくは全方向に光が放たれるため、換算するとロウソク1本あたりの明るさは12.57ルーメンになります。
市販されているLEDランタンの明るさが、約数10ルーメンから明るいものでは1000ルーメン以上であるため、ろうそく1本あたりの明るさは決して強くありません。ボタン電池で点灯するキーホルダー型のミニライトが10〜20ルーメン程度であるため、それと同じくらいの明るさであると認識されます。
それでも停電時に約12ルーメンの明かりがあるのとないのでは雲泥の差であり、ろうそくの場合は全方向に光を放つため、ほのかに周囲を照らしてくれます。火に気をつければ、屋内での避難生活にとても便利であると言えます。
【災害時にろうそくを使用する時に注意するべきこと】
メリットも多いろうそく・キャンドルですが、災害時の使用においては以下の注意点を守るようにしましょう。
- 大きな地震発生後の停電では、余震の可能性があるため使用しない。
- 周囲に可燃物を置かない。
- 地震で家の中が散乱している時は使わない。
- 火を灯している時は、決して離れないこと。
- 就寝時は消すこと。
- 特に子どもがいる場合、火傷に注意すること。
- キャンドルなど重心が低いものを使用し、長くて不安定なろうそくはなるべく使用しない。
- キャンドルグラスやキャンドルランタンなどを使用する。
- 長いろうそくも、耐熱のビンやコップなどに入れれば倒れにくくなる。
- 消火器などをすぐに使えるようにしておく。
我が家ではキャンドルの転倒防止・火災防止のため、無印良品の「重なるキャンドルホルダー フロスト」を用意しています。1個あたり税込 350円(2022年10月時点)とお手頃で手に入りやすく、コンパクトで場所を取らず、一般的なキャンドルがすっぽりと収まります。また曇りガラスタイプなため、ろうそくの灯りを周囲に拡散してくれる効果もあります。
キャンドル用のランタンケースもありますが、テーブルに立てて使うにはやや不安定であり、どちらかというと吊るして使うタイプになります。キャンプでは良いかもしれませんが、災害時の屋内では使い道が限られるかもしれません。
ろうそく使用に限らずですが、万が一の火災に備え、家庭用消火器を備えておきましょう。それに加え、簡単に使えるスプレータイプの消火器を、ろうそくの近くに置いておくのもおすすめです。
【まとめ|正しい知識を持ち安全に配慮すれば、とても便利な防災グッズに】
ろうそくやキャンドルは劣化がほとんどないため、長期保存が可能です。ですが、普段から使い慣れておくことも重要です。
我が家ではキャンドルを、袋単位でローリングストックして備えるようにしています。普段使いとしてアロマポットに使ったり、缶詰ウォーマーに使用するなど、地道に消費しています。
あととても大事なことですが、ろうそくやキャンドルを備えるなら、火を着けるマッチやライターの準備も忘れないようにしましょう。