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《車の冬の防災について》
雪や凍結により、スリップ事故や立ち往生に巻き込まれる可能性があり、車の冬の防災として雪対策が挙げられます。
2020年12月には、関越道で大規模な立ち往生が発生し、解消に3日を要しました。2021年1月には、北陸道でも大規模な立ち往生が発生しています。これ以外にも立ち往生は例年発生しています。
そもそも大雪が予想される時や、主に都市部で降雪の翌日など凍結が予想される場合は、不要不急の車の利用は控えるようにするべきです。「危ない時は運転しない」という心構えは、防災対策の基本といえます。
やむなく雪道を運転する場合、急発進・急加速・急ハンドル・急ブレーキなど、「急」のつく動作は控えるようにします。また、風通しのよい橋の上、陸橋、トンネルの出入り口付近、日陰になるところは路面が凍結している可能性があり、特に滑りやすくなっているためより注意が必要です。市街地の交差点や坂道も滑りやすいポイントとして有名です。
《スタッドレスタイヤを履いておく》
降雪時に普通のタイヤ(サマータイヤ)で走行することは極めて危険であり、スリップやスタックを起こし、自分だけの問題ではなく、立ち往生や渋滞など非常に他人の迷惑になる可能性があります。降雪地帯では必ずスタッドレスタイヤを履きましょう。
近年人気のオールシーズンタイヤは、サマータイヤとスタッドレスタイヤのそれぞれの性能を高次元で両立しているタイヤであり、その名の通り1年を通して使用できる全天候型タイヤです。性能のバランスが良く、都市部をはじめとした雪が滅多に降らない地域に向いているため、近年装着率が上がってきています。
しかし、オールシーズンタイヤは年々性能が進化しているものの、多少の降雪を想定したタイヤであり、アイスバーン(凍結路)にはほとんど対応していません。アイスバーンではサマータイヤより多少グリップする程度の性能なため、凍結が予想される場合(都市部では降雪があった翌日などは特に要注意)や、雪国へ行くには不十分であるといえます。
参考:JAFユーザーテスト「走れても止まれない、雪道のノーマルタイヤ」
《タイヤチェーンを積んでおく》
スタッドレスタイヤ最大の弱点は、新雪など積雪路の走行です。雪が踏み固められた圧雪路の走行性能は優れていますが、積雪路では十分なグリップ力が得られにくくなります。そのためスタッドレスタイヤを装着していても、チェーンを取り付けた方がより悪路を走行しやすくなります。
またチェーン規制がされている道路では、スタッドレスタイヤを履いていても、チェーン未装着では走行できません。そのため、雪国へ行く際にはチェーンも備えておく方がより安心です。
チェーンには金属製、非金属製、布製、スプレー式があります。
【金属製】
最も走破性が高いとされるのが金属製です。非金属製のチェーンと比べると安価であり、収納もコンパクトです。デメリットとしては装着がやや大変であったり、装着時の乗り心地は悪くなりがちで、振動や騒音が大きくなることが挙げられます。乾燥路で使用すると千切れる可能性があったり、一部のトンネルでは金属製チェーンが装着不可の所があります。
使用頻度は多くなく、万が一のために備えておきたい方におすすめです。
金属製チェーンには、亀甲型とハシゴ型があります。ハシゴ型は「ラダー型」とも呼ばれ、前後方向のグリップ力に優れていますが、横方向へのグリップはやや劣ります。亀甲型は横方向のグリップにも優れています。
【非金属製】
ゴムやウレタンでできており、金属製よりも軽く着脱が簡単で、振動や騒音が少なくなっています。デメリットとしてはコンパクトになりづらいこと、価格が金属製より高めなことが挙げられます。使用頻度が多めの方におすすめといえます。
非金属製のチェーンには、ハシゴ型とネット型があります。ハシゴ型は横方向へのグリップがやや劣り、ネット型は横方向へのグリップも優れています。
【布製】
ポリエステルなどの布でできており、装着が被せるだけと非常に簡単で、コンパクトに畳むことができます。走行も振動や騒音が少ないです。
あくまで緊急時の脱出、移動用として開発されているため、耐久性が低く長距離走行には向きません。また水分の多い雪では、雪がタイヤに張り付いて滑りやすいデメリットもあります。
【スプレー式】
タイヤにスプレーするだけで、一時的にグリップ力を上げることができ非常に手軽です。しかし、チェーン規制に対応していないこと、他のチェーンほどグリップ力に優れてはいないこと、耐久性は極めて低いことから、あくまで緊急時に一時的に効果を発揮する程度のものです。
チェーンの種類 | ○ メリット | × デメリット |
---|---|---|
金属製 | ・走破力が高い ・比較的安価 ・収納がコンパクト | ・重く、装着がやや大変 ・振動や騒音が大きめ ・装着が禁止されている路面がある |
非金属製 | ・金属製より軽い ・装着が比較的簡単 ・振動や騒音が少ない | ・やや高価 ・コンパクトになりづらい |
布製 | ・極めて軽い ・装着が簡単 ・振動や騒音がかなり少ない | ・耐久性が低く、長距離に向かない ・水分が多い雪では、張り付いて滑る |
スプレー式チェーン | ・スプレーするだけと非常に手軽 | ・耐久性がかなり低い ・あくまで一時的な効果のみ ・グリップ力は高くない |
参考:JAF クルマ何でも質問箱「[Q] チェーンの種類とそれぞれの特徴を教えてください」
《チェーンはどのタイヤに巻くか》
チェーンは駆動輪に巻きます。前輪駆動(FF)であれば前輪に、後輪駆動(FR)であれば後輪に装着します。駆動輪が分からない場合、車の取扱説明書に記載されています。
4WD車の場合は前輪も後輪も駆動輪ですが、どちらかが主に使う駆動輪となっている場合が多く、車種によって異なります。前輪駆動ベースであれば前輪に、後輪駆動ベースであれば後輪にチェーンを装着します。後輪駆動ベースの4WD車は、スポーツカー、高級車、本格的なオフロード車であることがほとんどです。ファミリーカーの4WDであれば、多くは前輪駆動ベースのため、どうしても分からなければ前輪に装着するのも一手です。
自分が運転する車の駆動方式は、予め確認しておくことをおすすめします。
《自分が立ち往生(スタック)した場合》
自分がスタックした場合、タイヤを真っ直ぐにし、ゆっくりとしたアクセル操作で前進・後退を繰り返し、雪を踏み固めて脱出を試みます。タイヤ前後に雪がある場合、スコップなどで取り除きます。タイヤの接地部分に滑りにくもの(布、車のフロアマット、チェーン、緊急脱出用の板、砂など)敷き、脱出を試みます。
前輪駆動車の場合は、ハンドルをこまめに切って雪を踏み固めながら脱出を試みることもできます。後輪駆動車の場合は、後輪に荷重をかけて(後部座席に同乗者などに乗ってもらったり、荷物を後部に積んだりする)脱出を試みます。
これ以外には、人に車を押してもらったり、タイヤの空気を少し抜いて空気圧を下げることも有効です。これで脱出できない場合、JAFやロードサービスを呼び助けを待ちます。
《立ち往生に巻き込まれた場合や、助けを待つ場合》
降雪量の多い道路では、特に大型車が立ち往生しやすく、1台が立ち往生すると後続車が減速・停止し、それにより発進できなく車両が増えるとますます渋滞が発生し、大規模な立ち往生となります。このようにして立ち往生に巻き込まれる可能性は、誰にでも起こり得ます。
立ち往生に巻き込まれた場合、長時間にわたり救助を待たなければなりません。その間、防寒具を着込みなるべくエンジンを切ります。暖房を稼働させるためエンジンをつけっぱなしにすると、排気口が雪で覆われ、排気ガスが車内に流入し、一酸化炭素中毒で死亡するリスクがあります。どうしても暖房を使用する場合は、定期的に排気口周りの雪を取り除きます。
また、長時間狭い車内で同じ姿勢のままでいると、血流が悪くなり、血の固まり(血栓)が出来てエコノミークラス症候群の危険性が高まります。予防のために定期的に体を動かすようにします。
《車に防災グッズを備えておく》
長時間の立ち往生が発生すると、食料や飲料水の問題、トイレが問題となります。車には簡単な食料・飲料水、非常用トイレなどを備えておくと安心です。最近ではメーカー純正の車載用防災セットもあり、ネットショップでも様々な車用防災セットが販売され、簡単に手に入りやすくなっています。
私の場合は車載用の防災グッズとして、使わないバックに下記のものを入れて車に備えるようにしています。
- 保存水
- 10年保存クッキー(-20~80℃対応)
- 使い捨てカイロ
- LEDランタン
- 非常用トイレ(大便用と小便用)
- 子供用オムツ
- 生理用品
この他、折りたたみスコップ、防水手袋、牽引ロープ、ブースターケーブル、スノーブラシ・スクレーパー、寝袋なども積んであります。
バッテリーあがり対策にジャンプスターターを
車のバッテリー(鉛バッテリー)は、化学反応によって放電・充電をする仕組みです。気温が低い冬では、その化学反応が弱まるため性能が低下し、バッテリーあがりを起こしやすくなります。
寒い冬、特に大雪で立ち往生が発生した場合など助けがすぐに来ない状況で、どうしても暖をとるために、一酸化炭素中毒に注意した上でエンジンをかけたい時、バッテリーあがりでエンジンがかからず暖房が使えないと、低体温で命の危険が生じます。そんな時に持っていると安心なのが、「ジャンプスターター」です。
「ジャンプスターター」とは、車のバッテリーがあがってエンジンがかからない時に、一時的にエンジン始動に必要な電力を供給し、エンジンをかけてくれる専用のモバイルバッテリーのような製品です。内部に大容量のリチウムイオン電池やコンデンサを持ち、専用のケーブルでバッテリーのプラス・マイナス端子に装着して使用します。
エンジンを始動できれば、その後は車のオルタネーター(発電機)によりバッテリーを充電することができます。
USB端子を備えてスマートフォンの充電などもできる製品も多く、通常のモバイルバッテリーとしても使用できます。
製品のバッテリー容量により、始動できるエンジンの最大排気量が決まっているため、購入する場合はよく確認しましょう。
《冬の防災は事前の備えが重要》
車の冬の防災は、事前の準備・備えが非常に重要です。タイヤやチェーンの選び方は、住んでいる地域やライフスタイルによって変わってくるため、それぞれの特徴を理解し、備えるようにします。また車載用防災グッズは、大雪による立ち往生対策だけでなく、出先で災害にあう可能性なども考え、備えておいて損はありません。
大雪による立ち往生などはいつ巻き込まれてもおかしくないため、車の冬の防災対策も是非意識してみてください。