「護身・防犯」は「防災」である  〜「油断大敵」「逃げるが勝ち」「窮鼠猫を噛む」〜

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《「護身・防犯」が「防災」である理由》

近年、電車内などでの無差別殺傷事件が多発しています。

殺意を持って刃物などを振り回して襲ってくる卑劣で身勝手な暴漢は、いつ何処で遭遇するか分からず、誰でも被害者になり得ます。

近年発生した、特に大きな電車内の無差別殺傷事件としては、2018年6月9日の東海道新幹線車内での殺傷事件(女性が切りつけられ、止めに入った男性が死亡)、2021年8月6日の小田急線刺傷事件(20歳の女子大生が重傷)、2021年10月31日の京王線刺傷事件(72歳の男性が刺されて重症)などがあります。いずれも犯人の極めて身勝手な犯行動機により被害者が出ています。

ちなみに私は、護身術や特殊な訓練を全く受けたことがない、ただの防災好きな一般人です。あえて言えば、中学生の頃に剣道二段を取得していますが、それ以来全く稽古もしていないほぼ素人です。ですが「防災」は「災いを防ぐ」という意味であり、「護身・防犯」も防災の一部として考える必要があります。

防災好きな一般人として、護身についてどういう心構えを持つべきかを考えてみました。

《電車やバス内ではスマホを使う時間を極力減らし、周囲を観察する。》

無差別殺傷の犯人は口々に「誰でもよかった」と語ることが多いですが、法務省の法務総合研究所の報告「無差別殺傷事犯に関する研究」によれば、犯人は自分より弱者と思われる者(子ども、女性、高齢者等)をターゲットにすることが最も多くなっています。

子ども・女性・高齢者でなくても、ずっとスマホに目を落としていたり、さらにイヤホンをしていたり、ましてや寝ていたりすると、周囲からみても明らかに警戒心の低さが分かります。また、迫り来る脅威に気づくのも遅れてしまいます。

無防備な状態にならないことで、ターゲットになりづらくすること、周囲を観察することで、脅威に素早く気付けるようにしておくことが非常に重要な心構えであるといえます。

怪しい人物を観察するポイントとしては、

  • 声の大きさがおかしい
  • 距離感が近い
  • 仕草や挙動が早くておかしい
  • 一点を見つめたり、視線がおかしい

これらが挙げられます(※一般社団法人 暴犯被害相談センター 代表理事 加藤一統 氏の記事を参考にしています。)。

これらのポイントに当てはまる人物全てが危険とは限りませんが、意識を向けておくことにより、万が一脅威となった時に素早く行動に移すことができます。

突然の暴力など脅威に対したとえ成人男性であっても、訓練を受けていない一般人は萎縮し、動けなくなります。落ち着いた思考や行動を取ることも非常に難しくなります。しかし、少しでも早く異変に気づくことができれば、わずかでも心の準備時間を得ることができ、生存確率を上げることができると思います。

電車内の消火器と非常用ドアコック(イメージ)
バスの非常口(筆者撮影)

その上で平時より、逃げ場のない電車やバスに乗るときは、なるべく非常用ボタン、消火器、非常口、非常用ドアコックの位置は確認するクセをつけ、もしもの時に短時間でアクセスできるように心掛けることも重要です。

《兎にも角にも逃げる》

脅威が発生した場合まずはとにかく逃げることを優先します。可能なら、電車内であれば非常用ボタンを押し、外であれば大声で助けを呼び、周囲に危険を知らせます。

犯人から10m離れると多くが襲うのを諦め、20m以上離れるとほとんどの場合、追いかけるのをやめるそうです。逃げるときは、十分離れるまではなるべく背中を見せないようにします。

またこういう状況においては、「おそらく大丈夫だろう」という「正常性バイアス」や、「みんな逃げてないから大丈夫だろう」という「同調性バイアス」が働きます。こういった心理が心に働くという認識を持つことで、バイアスにとらわれずいち早く「逃げる」という初動をとることができます。

こうすることで、日常の危険の70%以上を回避できるそうです。

事件発生時に現場にいた人が、スマートフォンで事件の様子を撮影し、その映像がよくテレビで放送されます。しかしこれは、逃げ遅れる可能性があること、場合によっては犯人を刺激して自分がターゲットとなる可能性があることから絶対に避けるべきです。

《どうしても避けられない時、自分と大切な人を守るために闘争する》

何よりも脅威から逃げることを優先しますが、それでも逃げ口に人が集中したり、犯人に逃げ口を塞がれたりして逃げられない場合も考えられます。逃げられない時、もしくは自分の家族など守るべき人が脅威に晒されている場合は、全力かつ死に物狂いで闘争しなければなりません。

リュックやカバンを盾にして防御・攻撃をしたり、新幹線や電車であれば座席を外して盾にしたり、傘があればそれを武器にしたり(その場合は広げて、「面」で相手を攻撃するのがよいそうです)、ズボンのベルトを外して武器にしたり(ムチのように使用)、電車内の消火器を武器にしたり(消火液を吹きかけたり、消火器自体を武器にしたり)、身近にあるものを武器として使用します。

参考動画
参考動画

正当防衛・過剰防衛など法律的な問題も関係しますが、まずは危機から逃れることを優先しなくてはなりません。

《護身術や武道、格闘技はどうか》

私自身が、護身術・武道・格闘技に精通している訳ではないので、実際のところは分かりません。ですが、明確な殺意を持って刃物など武器を振り回す暴漢に対し、相当な武道や格闘技の熟練者であっても、無傷で制圧するのは至難の業ではないかと思います。

ましてやちょっと筋力に自信がある、護身術や武道を習ったことがある程度で、闘うことを第一に選ぶのは極めて危険な行為です。

《護身用品は持ち歩かない》

催涙スプレー
特殊警棒
スタンガン

催涙スプレー、特殊警棒、スタンガンなど、護身用品といわれるグッズはネットショップなどで簡単に手に入ります。

しかし、これらの用品を普段持ち運ぶことは、軽犯罪法違反に問われる可能性が非常に高くなります。軽犯罪法では、「正当な理由なく他人の生命を脅かす武器を携帯し、出歩いてはならない」とありますが、護身目的にこれらの用品を持ち歩くことが、いかに自分にとって「正当な理由」があっても、それが現場の警察官に「正当な理由」と判断されることはほとんどありません。

警察官に職務質問され護身用品がみつかる→交番や警察署で事情を聞かれる→護身用品は没収される→軽犯罪法違反で書類送検→不服であれば裁判で争う、という途方もない労力がかかります。

護身用品の本来の目的と矛盾しているのが現状ですが、現実的には持ち歩かない方がよいと思われます。

また護身用具は強力な武器であり、使いこなすには熟練が必要である上、奪われると逆に犯人に武器を与えることになります。

《まとめ》

一般人にとっての護身・防犯の心構え3点

①警戒心を忘れない     →「油断大敵」

②脅威からはとにかく逃げる →「逃げるが勝ち」

③逃げられなければ戦う   →「窮鼠猫を噛む」

これらはあくまで防災好きのただの一般人が、可能な範囲で情報収集し、まとめた護身・防犯対策です。実際に暴漢に出くわした際、果たして私のような一般人がどの程度行動できるかは、はっきり言ってわかりません。ですが、日々護身・防犯を少しでも意識することで、いざという時の生存確率を上げることができるのではないかと思います。

参考:ボデタンナビ「【護身術と護身用品】危険を70%減らす方法と、はじめに知るべき本当の効果」

参考動画
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